SH Diary.

旅行記、ときどき野球。

京都に、夏がやってきた

その日、朝から続いた会議が13時半に終わって、いそいそと地下鉄に吸い込まれると、すでに目の前に浴衣姿の女の子が鎮座している。今日は祇園祭宵山。駅に停まるごとに、これから街を闊歩するんだろうなあと思しき人たちが乗り込んでくる。

かくいう僕もそのひとりなのだが。

四条駅で降りるとBGMがコンチキチンの音色で出迎えてくれる。そんななか、文字通り人混みをかき分けかき分け、「厄除けちまきいかがっすかーーーーー」の大声にも目もくれず、四条室町の交差点をいそいそ北へ上る。

僕にとって祇園祭とは宵宵山宵山歩行者天国でも、かと言って山鉾巡行のことでもなく、近年はある店の豚まんを買うためだけのイベントと言っても過言ではなくなってきた。その店、「膳處漢ぽっちり」にたどり着けば、予想通りの長蛇の列ができている。

今年もこの、祇園祭限定「しみだれ豚まん」の季節。

昨年は売り切れにビビって開店前の行列に並んだのでやけに時間がかかったが、今年は客の動線がスムーズだったこともあって20分ほどで売り場にたどり着けた。さくっとお買上げで今年も祇園祭のミッション達成。ついでに河原町へ用があったのでそそくさと退散する。

だけど空を見上げた瞬間急に胸騒ぎがした。最近の暑さでは考えられない、妙に涼やかな風が通りを吹き抜ける。四条通を鉾眺めつつ歩こうかと思ったが、四条烏丸を過ぎたところで地下通路に避難する。

胸騒ぎはビンゴだった。

四条河原町で再び地上に出たら、すでに大雨が降っている。

もしも30分「しみだれ豚まん」を買う時間がずれていたら、間違いなくずぶ濡れだった。

しかも買い物を済ませて外を出たらゲリラ豪雨に進化していた。道路の反対側に用事があるのだけど、傘が無いので横断歩道すら渡るのを躊躇する。

そういえば先週河原町界隈に出没したときも夕方からとんでもない土砂降りになり、全身ずぶ濡れになってしまった。そのときも当然傘なんて持っていない。僕は誰かから恨まれているのだろうか。それか今年は梅雨時期にたいして雨が降らなかったぶんこうして夕立で取り戻しているのか、のどちらかに違いない。

結局、雨のやみ間を突いて駅まで移動してなんとかやり過ごす。途中、読みが甘く第2陣の雨にサーッとやられたが、さっきの大粒の豪雨よりかはマシだ。ただ、手に持っていたしみだれ豚まんの入った袋だけはビショビショだったが。

家に帰って、汗と雨でドロドロになった身体を洗い流し、1年ぶりにしみだれ豚まんにかじりつく。

やっぱり美味い。そして、エアコンから送られる冷風がとても心地よい。

いよいよ今年も、京都に夏がやってきた。