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SH Diary.

かつて不登校だったひとが野球や遠出、日常とたまにちょっとまじめなことを書いてます。

高校生と一緒に見つけた「やりたいこと」―「関西カイギ」スタッフ奮闘記

thought event

「雨」の天気予報が大きく外れた秋の青空の下、マイクロバスは山をどんどん上っていく。

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気付けば僕が座る席の窓からきれいな大阪平野が見渡せて、まるで小学生の遠足のような歓声が上がった。あれがハルカスですかねー、なんていう話をしているうちに、バスは絶対にほかの車とすれ違うことのできない細い山道を抜けて目的地にたどり着く。いつしか僕のiPhoneには「圏外」の文字が躍っていた。

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これから3日間、電波の繋がらないこの場所で高校生70人と向き合い、自分の「やりたいこと」をカタチにする作業が始まる。

認定NPOカタリバさんのこの「全国高校生マイプロジェクト」のお誘いをもらったとき、僕は即座に行きます、と返信した。スーパーで昼食を買うのに20分ウロウロすることもザラなくらい優柔不断な僕が、珍しくこの決断にはまったく迷わなかった。

カタリバさんのことは僕が高校卒業する直前くらいのころから知っている。昔から興味のある団体だったし、高校教員免許課程を取得中の身としては直にたくさんの高校生といろいろ話し、一緒に考え、ともに歩いていく3日間というのはあまりにも貴重すぎた。

「関西カイギ」と銘打たれたこの3日間は、マイプロジェクト初の関西開催とのことで関西はもちろん、東海・中四国・山陰などから70名もの高校生が集まった。その中で僕は「メインファシリテーター」として、振り分けられた5人班に入ってワークをまとめたり生徒の手助けをする役目に当たった。

様々なワークシートを用い、高校生の興味関心、自分のやりたいことを極限まで引き出し、最終日にスケッチブックを用いてみんなの前で発表させる。3日間何やったか簡潔に述べるとこうなるのだが、これがものすごくタフな3日間だったのは言うまでもない。

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「これさ、なんで地域活性化にしたの?」
「なんかテレビで社会問題になってるって言ってたから・・・」

確かに社会は困っているかもしれないけど、別に興味も知識もないことを解決しようと言ったって限度がある。だからこそ、自分はこういうキッカケでこの問題に興味がある、こういうプロセスを経てこんな社会にしたい、という思いが、何よりも大事になってくる。

何せ、「マイ」プロジェクトなのだ。自分の興味関心に沿ったことじゃないと、意味がない。

だから、「なんで?」と尋ねて「社会問題になってるから・・・」というような理由が出たら、その瞬間「それじゃマイプロジェクトとは言えないよね」とすぐに考え直すように言った。だいたいそんな企画は、最終日の発表資料を作る時点でどうしてもいいものは上がってこない。

こういうことをやりたい、と導き出しても、何度も何度もしつこく「これってどういうことなの?」「なんでそう思ったの?」と聞き続ける大人たち。まるで何度も何度もろ過して澄み切ったラーメンのスープをつくる作業に似ている。きっとその言葉に苦しんだ高校生も多かっただろう。

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でも、それは大人たちも一緒なのだと思う。

この子へのアプローチはこんなものでいいのだろうか。あの子の進捗は他のスタッフに任せてていいのだろうか。僕よりほかのスタッフの方が何百倍も話を引き出せている。他のチームは結構進んでるけどうちの進捗はまずいぞ・・・。

高校生が苦悶の表情を浮かべるとき、メインファシリの僕も自問自答を繰り返していた。

ある班ではみんなが輪になって作業をしていた。しかし自分が担当した班は方向もバラバラ、ほぼ個別の作業でどんどん進んでいく。班が集合したとき「仲良く」というスローガン立てたけど、これは大丈夫なのだろうか???

合宿が終わってから、僕の補佐的な立ち位置で班に入ってくれた大学生に問うと、彼女はこう返してくれた。

あれで良かったと思いますよ。あの子はいろんなスタッフに聞いてどんどん中身を作りたかったのだろうし、この子はひとりで黙々と作る方が良かったのだろうし。思い思いのやり方で進めていいと思います。

そのとき、何かこうストンと腑に落ちる感覚があった。

あれで良かったのだ。

右も左も分からないまま集合して生徒を迎えていた僕は、最初ほんとに手探り状態で、他のスタッフの「これいいな」と思ったやり方は即座に取り入れるようにしていた。だからこそ、他の班の進捗ややり方と自分の班を比較して、自分で自分の首を絞めていた。

いろんな大人に話を聞きたい高校生を引き留めていたらどうなっていたか。個人作業が適している高校生を「チームワーク大切にせなアカンやろ」と無理繰り全員で作業させていたらどうなっていたか。最終的に、いつの間にか行きついていた思い思いにやらせる進め方は、それはそれでありだったのだと思った。

最終日のランチの時間、班が集合したときに立てたスローガンを何割達成できたか振り返る時間を取った。うちの班の最終目標は「この合宿で1番の班になる」ことだったのだが、そのポイントを振り返るときになってひとりの生徒がぽろっとこんなことを言った。

オンリーワンやから。オンリーワン。

うちの班はうちの班で良かったのだ。そういえばその生徒は発表を作るにあたって、親に「あなたはあなたのままでいいんだよ」と言われたことに救われた、と教えてくれた。そうだよね、他の班と比較することなんてないよね。10歳も年下の高校生に、僕はまたひとつ学びを得た。

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あこがれる存在がいる。

クッキングパパ」という漫画に出てくる、荒岩の部下・田中。

彼は仕事面で多々ポカをやらかして荒岩にしょっちゅう叱られているのだが、その反面荒岩の息子・まことを昔から弟のようにものすごくかわいがっている。時に荒岩家に入り込み、まことのクラスメイトまで交えて一緒に遊び、文理選択や将来の相談に乗り、まことが成人すればいっしょに酒を飲む。

少年時代から成人するまで、まことにとって田中という存在はものすごいありがたい存在だったと思う。

今の子どもたちは、親や先生以外の大人と出会う機会がまず少ない。そしてそうやって出会う大人は、大体上下関係のもとになりたっている。しかしまことと田中の関係は、上下関係のそれとも、友達同士のそれとも当てはまらない。カツオで言うノリスケとか、まる子で言う友蔵も同様な関係だ。

この3連休、70人もの高校生と30人の大人と過ごして、僕はひとつの「やりたいこと」を見つけ出した。

高校生の「ナナメの関係」になること。

「上下関係」でもない、友達同士の「横の関係」でもない、「ナナメの関係」というのは子どもたちにとって実は重要な存在である。昔は地域のおっちゃんおばちゃんと言われる存在がこの「ナナメの関係」だった。でも今やたやすく近所の子どもに声かけたら不審者になっちゃう時代。

僕自身、中学生のころに不登校になってから、救われたのはフリースクールの先生だったり、高校時代に参加していたフリーペーパーの編集ボランティアで出会った人たち、つまり先輩でも友達でもないナナメの関係の存在だった。彼らと出会ってなければまちがいなく今の自分はない。

だからこそ、これからを生きる高校生や子どもたちの「ナナメの存在」として、先輩でも先生でもない立場で子どもたちを暖かく見守りたい。

今、不定期で関わっている中学生の居場所事業にたまに顔を出して、来週は来ないことを言うと「なんでおらんの!?」とよく悲しい顔をされる。この合宿に同じく参加していたうちのNPOの代表は、高校生から「こんな話聞いてくれる大人は初めて」と言われてとんでもないショックを受けたそうだ。

子どもたちも上下関係、対等関係で縛られない存在を欲している。

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合宿の最後、何か一言ある人は是非と言われ、僕は手を挙げた。実はある程度の原稿まで考えていた。

そこで言いたかったのは、今日ここでのつながりを本当に大事にしてほしいということ。

毎日、家と学校、バイト先の往復では120%会えない人たちが、あの3連休あの場に集まっていた。そしてマイプロジェクトは合宿が終わってからが本番である。人脈が広ければ広いほど、マイプロジェクトを実行に移すのに必要な人材を集めることができる。

だから、今この瞬間、いろんな人とTwitterFacebookで繋がったり、連絡先交換をしてほしかった。ナナメの関係を築いて、それをマイプロジェクトはもちろんのこと日常生活に役立ててほしかったのだ。

実際に「#関西カイギ」というハッシュタグもそれなりに活発に動いている。分かる範囲でもいいし、Twitterでたどればいくらでも参加者はいる。今からでも遅くはない、ぜひとも関西カイギに参加した高校生は、スタッフも含めていろんな人とつながりを持っていてほしい。必ずいつか役に立つから。

「関西カイギ」に参加された皆さん、高校生のみんな、本当に本当に3日間お疲れ様でした。そして、これからもどうぞよろしくお願いします。合宿中あまり話すことがなかった高校生も、プロジェクトの情報拡散とかはぜひ協力したいので、何かしらで声かけてくれると嬉しいです。

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