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SH Diary.

かつて不登校だったひとが野球や遠出、日常とたまにちょっとまじめなことを書いてます。

プレミアムフライデー、そのとき僕は

毎月最後の金曜日は15時で仕事を上がろう、みたいな取り組みが始まったらしい。

らしい、というのは、僕は会社勤めをしているわけではないので、その「プレミアムフライデー」とやらができても何ひとつ恩恵がないからだ。だけどプレミアムフライデープレミアムフライデー、とただその語感が楽しくてずっと連呼している自分がいた。

その日、午後からの仕事が片付いたのは夕方の4時半、つまりプレミアムフライデーが解禁されて1時間半が経つころ。意気揚々と仕事先を抜け出してみるが、わずか数%の導入率のせいかぜんぜん浮かれ気分がない。まあこんなもんか、と思いながら、バス停に向けいそいそ歩く。

すると、交差点の横断歩道を渡ると同時に一台のバスがさーっと走り去った。

ふと目をやったバスの行き先に、ぴーんとひらめいた僕。

これがいわゆるプレミアムフライデーだ、と思い付きで交差点の先のバス停まで猛ダッシュして、件のバスにぎりぎり飛び乗った。

「このバスは、四条河原町から四条京阪へ参ります」。

明らかに人間の声ではない、機械っぽい自動放送が程よく空いた車内に鳴り響く。

ほんとうは、翌日の講演の仕事に使う資料が未完成だったのでさっさと帰宅するつもりだった。ならば京都駅行きのバスに乗ればいいのだけど、とっさのひらめきが僕をこのバスに押し込めた。あの瞬間、このバスを見かけなかったらきっとそのまま京都駅行きのバスで悠長に読書していただろう。

少し揺られて四条京阪のバス停で降り、相変わらず人の多い四条通を東へ急ぐ。これこそプレミアムフライデー効果か、と思ったが、よく聞けばすれ違う会話が明らかに日本語ではないので、やはり関係はなさそうだ。途中、祇園の交差点で信号待ちにやきもきしながら、僕はある店に飛び込んだ。

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PABLO、というチーズタルトが有名なお店がある。僕はてっきり梅田とか難波とか、大阪市内にしかないものだと思っていたのだが、なんと知らない間に京都にも出店していた*1。場所は八坂神社のすぐ横。30分前、僕の横を過ぎ去るバスの「四条河原町」の5文字がなければ、僕は間違いなくここにいない。

そこで、とあるチーズタルトをどうしても食べたいなあと思っていたのだが、その品は「残りわずか」、とギリギリのタイミングだった。とっさにひらめいたものの、バスの中で売り切れてたらどうしよう、とずっとナーバスで読みかけの本が全く頭に入ってこなかったので、無事買えて思わずホッと胸をなでおろす。

ところが。

こちら、お気をつけてお持ち帰りくださいね!

店員のお姉さんの笑顔が、僕を再びナーバスにする。でもお姉さんの言うとおり、気をつけて持ち帰ることさえすれば、そこに「プレミアムフライデー」が待っているのだ。再び人混みの四条通に意を決して飛び込む。とにかく、いま手に持っている「PABLO」の5文字が刻まれた袋は何が何でも守らなくてはいけない。

途中、袋がフェンスに少しかすってしまった。それだけでタルトが崩れたんじゃないか、と動揺する。さらに祇園四条の駅から乗った京阪電車が微妙に混んでいて、ナーバス度合いがますますひどくなっていく。よく考えりゃ、お手洗いに行くのもはばかれる。

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夕焼けがきれいな京都タワーの写真を撮るのも、細心の注意を払って。

帰りの電車も、いつも絶対に使わない網棚にチーズタルトの箱が入った袋を置く。どうせ本を読むので、これは一緒に荷物置かないとチーズタルトを網棚に置き去りにして降りかねない、とその横にカバンも置いた。おかげで、取り出すときにカバンから財布がこぼれて降ってきてしまった。

電車を降りて家までの道のりも、なるべくゆっくりとチーズタルト第一で歩く。家の冷蔵庫に安置されるその瞬間まで、1秒も気を抜くことは許されない。また袋が少し僕の歩く足にかすってしまい、ひどく狼狽する。

家に着いて、一目散に冷蔵庫を開け、そろーり、そろーりと袋から箱を取り出し空いたスペースに静かに置く。ひとまず、これで「お気をつけてお持ち帰りくださいね!」というお姉さんのあの笑顔がナーバスではなくなった。ただ、本当にチーズタルトが崩れていないか、これだけが心配だった。

そして、夕飯後、開封のとき。

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よかった!無事だった!

この瞬間、すべてのナーバスから解放され、晴れて僕はプレミアムフライデーを勝ち取った。

僕がどうしてもどうしても気になっていたのは、「つぶつぶいちごチーズタルト」という期間限定品だった。食欲をそそる鮮やかな赤。僕は即座に席を立ってコーヒーを入れる準備をした。

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ちなみに切るとこんな感じ。

あえてフレッシュも砂糖も入れない、ブラックコーヒーを傍らにおいて、いざ一口。

わはははははは!

思わず笑ってしまった。それくらい美味かった。そもそも僕はチーズケーキには目がなく、かついちごが入った菓子も全般的に好物なのだ。こんなもの、まずいわけがない。タルトを一口、コーヒーを一口、またタルトを一口、コーヒーを一口・・・

ここ最近食べたケーキ全般がまずかったわけではない。でも、この「つぶつぶいちごチーズタルト」は、ここ最近食べたケーキのなかで一番美味かった。なぜもっと早く八坂神社にPABLOの店舗ができたのを知らなかったのか。そんなことを思うと、ブラックコーヒーが余計に苦く感じる。

ああ、これが正真正銘のプレミアムフライデーなのではないか。

世間ではぜんぜんプレミアムじゃないぞ、などと言われていたし、僕も縁がないと思っていたけど、なんだかんだで「プレミアムフライデー」を過ごしてしまった。もうプレミアムフライデーって15時で会社上がるんじゃなくてこういう過ごし方のことを言えばいいんじゃないか、と思ったのだった。

*1:11月にできたらしい。ちなみに東京や静岡、石川、沖縄などにもある

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