SH Diary.

かつて不登校だったひとが野球や遠出、日常とたまにちょっとまじめなことを書いてます。

「他人に教えたくない店」を知ってしまった背徳感がヤバい

5年ぶりに学生時代の後輩と会うことになった。

ついでに共通の先輩も呼んでご飯食べようということになったのだが、「すごく気になってる店があるんです」という後輩の一声で場所も決まり、予約の段取りはすべて後輩に任せた。

そしたらその店がすごかった。

とりあえず先輩は仕事で遅れてということで、まずビールと、それからいくつかの小鉢を注文。

そのなかに、瓜とハモを和えたものがあった。これは後輩のセレクト。

「この瓜、メロンみたいな味しますね」
「あ、ほんまやね、うまいなあこれ」

などと言ってたら先輩が登場し、あらためてビールと料理をどどんと注文する。

ここから、僕らはひたすらに圧倒される運命を辿っていく。

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ゴマサバの刺身。これは僕のたっての希望。

普通サバというのは腐りやすい魚であり、だいたい店で提供されるときは酢でシメたり焼き魚で出てくる。つまり、「サバの刺身」というものはよっぽど新鮮なサバが入らないと出せない食べ物なのである。

ちなみに僕は福岡でよく食べられる胡麻醤油に漬けた生のサバを想像していたのだが、出てきたのは「ゴマサバ」という種類のサバだった。まあそんなことはどうでもいい。生姜とわさびをちょっとのせていただく。

「うわ!」
「あーーー、これはうまい!!!!」
「うんまっ!!」

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だしに浸かった出し巻き卵。

「ああ・・・!」
「うまい・・・!」
「これすごいな」
「この出汁に餅入れて雑煮にしたら最高やと思う」

ところで出し巻き卵は4切れ、僕らは3人。最後の1切れを半等分にして、3人でじゃんけんする。

・・・負けたのは僕だった。仕方がないので切れ端をちょっともらう。

それも、うまい。

この夜の僕らは、とにかく褒めずにはいられなかった。

「ナスの揚げ出し、うんまっっっ!!!!」
「豚しゃぶサラダ、ゴマドレめっちゃ美味いやん!」
「焼き青唐辛子、最高やん!!!」

仕事の話もした。近況の話もした。昔話もした気がする。

しかし今となっては「うまい」という3文字を連発していたこと以外、あまり記憶にない。

僕にもっと語彙力があればな、と青唐辛子を噛み締めながら思った。

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シメのご飯ものを注文したところで、マスターが僕らのテーブルにやってくる。

「よろしければ、今日釣りたてのイカあるんですけど、どうですか?」

食い気味で「お願いします!!!」と注文したら、キレイにさばかれたイカがまるまる1杯。

「ふっ・・・ふはははははは!」

僕はどうやら、本当にうまいものを食べると爆笑してしまう癖があるらしい。

「なんじゃこりゃああああ!」
「こんなもん、まずいわけあらへん!」

噛み切れないほどの歯ごたえとイカの甘み。去年、福岡の魚市場の食堂で食べたイカ刺しを彷彿とする味。

まさかこんなところでまたこの味に出会えるとは。隣で先輩が骨抜き状態になっている。

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そして、シメ。3人別々のものを頼んでみた。

僕は漬け丼。実は最初に注文した小鉢に漬けがあった。口にした瞬間、ああこれは確実にご飯に合う味だなあと思っていた。それで僕はシメいくならもうこれだな、と腹を決めていた。

スプーンでガッと一口いってみる。

瞬間、「これは共有しないと、まずい」と思い、対面でだし茶漬けをすする後輩に丼を差し出した。

「とりあえず、食べてみ」

そして後輩は「ヤバい・・・!」という言葉とともに、絶句した。

「なんだろう、ご飯に合う甘みというか・・・いやこれはうまい・・・」

イカの刺身で満腹中枢がかなり刺激されていた。でも、なぜか漬け丼を口に運ぶ手が止まらない。

しかも3人食べ終わったタイミングで温かいお茶がサービスされたところまで完璧だった。

そのままお会計に移る。僕は飲んでいないが*1、先輩と後輩は日本酒も嗜んでいる。まあこんなもんだろうなあ、と僕も先輩も財布から出した金額は同じだった。5000円。正直これでも安い部類だと思っていた。

しかし後輩が伝票を目にすると、明らかに「えっ?」と動揺した。

そこには「12100円」の文字。

要するに・・・ひとり・・・4000円?

「はぇ?」
「いやいやいやいや」
「え、やっす!」
「よ、よんせんえんですよ・・・」
「なんなん、なんなんこの店」

僕らは、ただただ感服するしかなかった。完敗だった。すがすがしく、負けた。

食事の美味しさ、店員さんの接客、マスターの人の良さ、そのすべてに、完敗だった。

帰りの電車で、先輩が何度もしみじみ「今日は幸せな1日やったなぁ」とつぶやいていた。

店を出て、3人は揃ってSNSを更新した。そこには誰と示し合わせたわけでもなく、共通の一文があった。

「絶対この店誰にも教えない」。

そういえば「この店は大事な人としか来たらアカンな」と後輩と話していた。よーしじゃあ今日はそのへんの居酒屋でパーッと飲むか!というノリで絶対に来ちゃいけない。おいしいものを、気心知れた人たちやお世話になっている人なんかと、静かにゆっくりしみじみ楽しむ店。

僕はうまい店を見つけたら人に教えるのがけっこう好きだ。たとえば誰かが福岡行ってきます、なんてツイートすると、必ず「ひらおの天ぷら定食はうまいぞ」などとリプライする。でも今日のこのお店は絶対に口外しちゃいけないと思った。こんな感情は生まれて初めてだ。

ということで、お店の情報は教えません。

京都のどこか、とだけ言っておきましょう。

*1:最初のビールもノンアルコール

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