SH Diary.

かつて不登校だったひとが野球や遠出、日常とたまにちょっとまじめなことを書いてます。

最後に見せた「6番背負った男の心意気」―井口資仁引退に寄せて

「一発出れば、同点か・・・」

そんな夢物語、あるわけないと思っていた。

9回裏、ロッテ2点ビハインド。マウンドには日本ハムの守護神、増井が立っていた。しかし先頭、今年も結局大不振に悩まされた清田が代打で出てきて初球を軽くライト前に持っていく。

この打ったバッターが清田、というところに僕は引っかかっていた。というのも清田は長い間、この次に出てくる「主役」と毎年自主トレをともにしていた、いわば愛弟子だったからだ。

「6番、指名打者、井口」

主役の名がコールされ、待ってましたと言わんばかりにZOZOマリンのボルテージが急上昇する。

今日は井口さんの引退試合。同点に追いつかない限り、この打席が日米通算21年の最後の打席になるだろう。ここはやはり、井口さんらしい引っ張った打球が観たい。いや流してライナーでもいいな、と思いながら、自然と「♪打て井口!頼むぞ井口!」と口ずさんでいた。

そのときだった。

井口さんが21年間の思いを込めて振り抜いた打球が大きく弧を描く。

え?え?え?

一瞬、センターがギリギリで追いついたのかと思った。しかしそれは、はちきれんばかりの大歓声で違うことに気づく。次の瞬間映し出されたのは、小躍りしながらダイヤモンドを駆け抜ける井口さん、その人であった。試合はこれで3-3の同点に持ち込まれた。

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うわああああああああああ。
すっげええええええええ!!!!!!
ほんとにホームラン打っちゃったよこの人・・・。

窓を開けているのも忘れて大絶叫をかましたあと、僕はただただ呆然とするしかなかった。気がついたらさっきのホームランをあらゆる角度から映したリプレイが繰り返し繰り返し流れていた。打った瞬間の角度、そして飛び込んだあと球場全体が大きく沸く瞬間、どれを取っても完璧。

引っ張るのならまだわかる。流すのもなかなかの技術だがありえる。しかし、ストレートに逆らわずに振り抜いた打球は、よりにもよってバックスクリーンの少し右、かなり深いところに着弾した。

涙は出なかった。ただただ、口をあんぐりとするしかなかった。

こんなことって、あるんだな。

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そして延長12回、サヨナラ勝利を決めたのは、キャプテン・鈴木大地のバットだった。

正直、井口さんのホームランが出てから、この試合は負ける気がしなかった。10回11回をチェンが見事にリリーフして、12回の田中靖洋もヒヤッとしたが最後の雄叫びに感情がこもっていた。するとその裏、先頭代打の肘井が左中間にツーベースをぶっ放す。

これで決まったな、と思った。そうしたらキャプテンのサヨナラタイムリー。

昨年のちょうど今頃、サブローの引退試合を現地で見届けたときも、それまで3度ストレートにタイミングが合わず三振していたのに、9回の最終打席はサブローらしい右中間へのツーベースで締めくくった。そのときも野球の神様っているんだなあ、としみじみ思ったものだ。

今日はそれ以上に強力な野球の神様がいた。これはまちがいない。

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その後の全員で「We Are」のほうが泣けたなー

井口さんといえば、忘れられないことがひとつある。

今から7年前のこれも今頃、3位に向けて負けられない戦いを繰り広げていたロッテは京セラドーム大阪に乗り込んでオリックスとの試合に臨んでいた。このとき西岡剛が同じ試合でスイッチヒッター初のシーズン200安打と最多猛打賞記録を達成した。で、それを僕は球場で立ち会った。

先にシーズン200安打を決めたとき、西岡がショートの守備位置につこうとすると、つかつかとセカンドから井口さんが歩み寄って、自ら手を差し出した。もちろん握手に応じる西岡。それに反応するレフトスタンドのロッテファン。

僕はこの、「大記録達成後の塁上の祝福」が、なんだか忘れられないのだ。

そんな気遣いもできる、頼もしい選手。チームの負けが込むころに「4番・指名打者・井口」のオーダーを聞くと「お?今日は勝てそうか?」とどれだけ思ったか。困ったときの4番井口さん、がもう観られないのは寂しいが、そろそろそんなチーム状況も脱却せねばならない。

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意外とこういう写真しか残ってないのも多少後悔している。

6番背負った男の心意気 今こそ見せろ 燃えろよ井口

来年、本当に監督として辣腕を振るう井口さんが観られるのか。もし背番号6のまま監督になったらこの応援歌をそっくりそのまま使える。「6」の数字に大きなゆとりがあるほどの頼もしい背中を、今度は指導者としてグラウンドで観たい。

ホンネを言えば、今年ほとんど野球を観に行けなくて、井口さんが引退するという話を聞いてから1度は「打て井口!頼むぞ井口!」と歌いに行きたかったのだが、叶わず終わってしまった。それだけが本当に心残りである。

井口さん、21年間、本当にお疲れ様でした!

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