SH Diary.

かつて不登校だったひとが野球や遠出、日常とたまにちょっとまじめなことを書いてます。

2018年読んだ本を、270冊の中から10冊だけ紹介するよ

昨年はじめた「電車内読書」は、今年も1年間見事に継続できた。しかも今年は春からやや通勤時間が伸びたので、そのぶん本を読む時間を長く確保できたのも大きい。仕事がない日でもとりあえず家で本を開く習慣が付いたので、今年は本を読まなかった日が1日もない。これは我ながらすごいと思う。

読んだ本の冊数も膨大になったが、2018年の振り返りということで、悩みに悩んで今年良かった本をセレクトした。これ以外にも良かった本はたくさんあるのだが、断腸の思いで10冊に絞って紹介したい。なお、「2018年に初めて読んだ本」という選定基準を設けている。

堀江貴文『多動力』幻冬舎

多動力 (NewsPicks Book)

多動力 (NewsPicks Book)

今年のベストを1冊あげてくれ、と言われたら、問答無用でこれを挙げる。

2018年は僕の中で大きな転換点になった年だった。NPOのスタッフをしながら学校の先生という職に就いたからだ。しかしこの両立がうまくいったかと言われるとそうではない。学校が忙しく、なにかミスを犯すたびに「NPOか学校、どちらか1つに絞るべきじゃないか」とよく悩んでいた。

そんなときに、悩みを解消してくれたのが、ほかならぬホリエモンだった。

この本でホリエモンは「肩書きを3つ持てばその人の価値が1万倍になる」と力説し、さらに「ひとつのことをコツコツとやる時代はもう終わった」と断言している。これにものすごく救われた。絞る必要なんてないんだと思った。この言葉に出会って、1万倍の価値を目指す日々が幕を開けたのだった。

おかげで、今年の秋以降は忙しいながらも非常に充実した日々を過ごすことができた。それは、ホリエモンの言葉によって「学校の先生」「NPOのスタッフ」、そして「不登校支援者」という3つの肩書きを意識したからこそである。そういう意味も込めて、今年のベストはホリエモンに捧げたい。
 

アンジェラ・ダックワース『やり抜く力 GRIT(グリット)――人生のあらゆる成功を決める「究極の能力」を身につける』ダイヤモンド社

やり抜く力 GRIT(グリット)――人生のあらゆる成功を決める「究極の能力」を身につける

やり抜く力 GRIT(グリット)――人生のあらゆる成功を決める「究極の能力」を身につける

ここ1年間、ずっとずっと読みたかった本は、案の定「もっと早く読んでりゃ良かった」と痛感する1冊になった。

アメリカの陸軍士官学校の養成プログラムに「ビースト」という毎年脱落者が続出する超過酷なプログラムがある。この脱落者の傾向を調べてみると、体力や高校での成績などが最低クラスの生徒に混じって、あろうことにそれらが最高クラスの有望株も大勢リタイアしていたことが判明した。

そのかわり、逆に完走した訓練生に共通していたのが類まれなる才能ではなく、ネバー・ギブアップ、つまり「やり抜く力」が強いことだった。

要するに体力や成績など「才能」に恵まれていたとしても、現実の世界や社会ではまったく意味を成さないのだ。これは陸軍士官学校のような特異な環境だけではなく、高校や大学などへの進学も「やり抜く力」に長けた生徒ほどレベルの高い学校へ進学していたという。

昨年『学力の経済学』という本を読んで以降、学力がいくら高くてもコミュニケーションとか忍耐力とか、そういう能力に欠けてたらなんの意味もないことを実感している。この2冊を読めば、学力一辺倒な日本の教育って果たして正しいものなのか?とまざまざと考えさせられる。
 

万城目学鹿男あをによし幻冬舎

鹿男あをによし (幻冬舎文庫)

鹿男あをによし (幻冬舎文庫)

今年一番読んだ小説家は誰かと問われれば、万城目学、という答えになる。

たとえば『鴨川ホルモー』であれば、深夜の吉田神社で繰り広げられる謎の全裸踊りで普通の大学生たちが「ホルモー」を操る力を獲得する、というように、万城目学は「普通の人が、実はどえらい特殊能力をもっている」という描写が実にうまい作家である。

その『鴨川ホルモー』(京都)『プリンセス・トヨトミ』(大阪)と並んで万城目学の「関西三部作」とも呼ばれる『鹿男あをによし』は、ひょんなことで奈良女学館に2学期限定で着任した「おれ」が、突然鹿に人間の言葉で話しかけられるところから物語がスタートする。

神々の使いに必要な「サンカク」と呼ばれるモノとはいったいなんなのか。なぜ生徒の堀田は「おれ」を避けるのか。そして神々の使いの鍵を握っているのは誰なのか。読後思わず動物嫌いの僕が鹿に会いたくてわざわざ奈良まで行ったほど、この物語に魅了されてしまった。

そう、『鹿男あをによし』の舞台は近鉄奈良駅行基像、平城宮跡、二手に分かれる近鉄特急の光*1、などなど、奈良まで電車で20分のところで生まれ育った僕としては容易に想像できる風景ばかりなのだ。こうした土地の描写が巧みなのも「関西三部作」の大きな特徴だと思う。
 

春名風花『少女と傷とあっためミルク ~心ない言葉に傷ついた君へ~』扶桑社

少女と傷とあっためミルク   ~心ない言葉に傷ついた君へ~

少女と傷とあっためミルク ~心ない言葉に傷ついた君へ~

はるかぜちゃん13歳のときの1冊。これを読み終えたとき、僕は言いようのない怒りが芽生えていた。

それははるかぜちゃんに対してではなく、13歳の女の子に対して罵詈雑言を浴びせる大人たちの醜さ、そしてそれにこちらがヒヤヒヤするほど健気に立ち向かうはるかぜちゃんの姿に対してだ。こんな本13歳の子に書かせんじゃないよ、という感想すら抱いた。

それくらい、13歳の素直な気持ちがグサッと突き刺さる。というか、はるかぜちゃんは素直「すぎる」。しかも罵詈雑言を浴びせる大人の心情や気持ちさえ冷静に分析している。もうお手上げだ。

この本は、13歳の女の子の素直な気持ちを受け止めきれないなら絶対に手を出すべきではない。だが、読んでほしいのはその気持ちを受け止めきれない大人たちだ、ということもまた事実だと思う。
 

菅広文『京大芸人式日本史』幻冬舎

この本は名義こそ「菅広文」だが、冒頭で「歴史は物語のように読め」と豪語する宇治原と「タイムマシーンで歴史を遡る」アイデアを出した菅ちゃん、このロザン2人の発想力の大勝利とも呼べる1冊だ。

ざっくりと言えば、ロザンの2人が菅ちゃん発案のタイムマシーンを使って、あらゆる日本史の場面に顔を出す。ややこしい租庸調制について中臣鎌足中大兄皇子に漫才させてみたり、書が有名な弘法大師空海には、なんと菅ちゃんがサインを求めたりもする。

正直、いままで読んだ歴史の本の中で、ここまでわかりやすく、かつ親しめるように書かれた本はない。もう1度書くが、ロザンの発想力に唸らされる。

このほか、京大卒の宇治原の勉強法がふんだんに詰まった『身の丈にあった勉強法』もものすごくよかった。このロザンの2冊は、中高生に自信を持ってオススメできる。
 

山﨑圭一『一度読んだら絶対に忘れない世界史の教科書』ソフトバンククリエイティブ

断言する。教養として世界史を勉強したいなら、絶対この1冊。

もう何度この本のレビューを書いたかわからない(そしてもれなく全部山﨑先生がリツイートしてくださった)。福岡の公立高校社会科の先生にして、YouTubeで高校地理歴史の授業動画を展開する山﨑先生こと「ムンディ先生」による渾身の一冊。

オリエントで文明が起こり、ギリシャローマ帝国が最盛期を迎え、インドでカースト制度が芽生えたと思ったら今度は話が中国文明に飛び、さらにムハンマドイスラム教を興し、そしてまた西洋史に戻る・・・。この世界史の教科書の構成がややこしくて、音を上げた人も多いはずだ。

世界史はそこここで起こった地域世界が結合して現代に至る過程を見ていく科目である。ということで、この本ではまず年代関係なくヨーロッパ・中東・インド・中国の4地域の歴史を整理し、後半ではその融合していく各地域世界の変容を追う。これだけでも、ものすごくわかりやすい。

そして、この本では年号を排除して、とにかく世界史を「流れで見る」ことに特化している。これも合わせて、ムンディ先生のYouTube授業「世界史20話プロジェクト」を受講すれば(もちろん無料!)、確実に世界史の扉を開けるはずだ。
 

前野ウルド浩太郎『バッタを倒しにアフリカへ』光文社新書

バッタを倒しにアフリカへ (光文社新書)

バッタを倒しにアフリカへ (光文社新書)

アフリカのサハラ砂漠周辺の国が毎年悩まされる「サバクトビバッタ」。何百もの集団で大移動を繰り広げるこの昆虫は、深刻な農作物の被害をもたらす。そんなサバクトビバッタに立ち向かうべく、「バッタに食われること」が夢だったひとりの日本人研究者がモーリタニアに乗り込んだ。

だが、そこで待っていたのはあまりにも前途多難なアフリカでの日々。なかなか大量発生しないバッタ、助手によるぼったくり、バッタ採集を手伝った子どもたちが報酬でモメまくり・・・などなど、次から次へと大きな壁が立ちはだかる。しかし、どういうわけかまったく暗い気持ちにならないのだ。

ついには研究費も底をつき、完全無収入で研究を続けるか一発逆転を目指すか・・・というところまで来てからの物語には、思わず感動してしまうほどの劇的な展開が待ち構えている。

モーリタニアイスラム教の国であり、この物語も空港でアルコール類を没収されるところからはじまる。そうした文化の違いという視点を読むのもおもしろい。ちなみにカラーでバッタはじめ虫の写真が何枚か掲載されているので、苦手な人は要注意*2
 

佐藤優同志社大学神学部』光文社

同志社大学神学部

同志社大学神学部

今年、共著を含めると一番読んだ著作者はおそらく佐藤優氏だと思う。池上彰氏との『僕らが毎日やっている最強の読み方』も良かったが、ここではこの本を推しておく。

簡単に説明すると、佐藤氏が同志社大学で学んだ数年間を、なんと目次も章立ても一切なしで振り返っている。正直、この本で散々引用される佐藤氏の研究テーマである神学の話や学生運動の話は、たいして頭に入ってこない。「フロマートカ」と言われても、よくわからないのが事実だ。

ではなんでこの本がすごかったのかと言えば、その記憶力の深さにほかならない。この本を開くだけで、佐藤氏が過ごした「40年前の京都」がありありと再現されるのだ。

河原町三条のバーでウイスキーを呷りながら議論し、四条縄手通り(いまの祇園四条駅あたり)のロシア居酒屋でウオトカを嗜み、河原町今出川の古本屋で買った本をすぐそばの喫茶店で読む。なんとそのときのコーヒーの味まで克明に記録されている。この人の記憶はどうなっているのだろう。

そして見逃せないのが佐藤氏のこのときの勉強量。確か別の著書で「京都*3では飲みに行くとき以外基本勉強していた」と書いていたはずだが、それが腑に落ちるほど、日々図書館に通いつめている。僕も大学時代、これくらいの根気で心理学を勉強すればよかった、と思った。
 

青砥恭『ドキュメント高校中退―いま、貧困がうまれる場所』ちくま新書

ドキュメント高校中退―いま、貧困がうまれる場所 (ちくま新書)

ドキュメント高校中退―いま、貧困がうまれる場所 (ちくま新書)

貧しいとは、選べないこと」。あとがきのこの一節がすべてを表している。

「入試で名前だけ書きさえすれば合格できる」、いわゆる最底辺校における中退生徒の実情がリアルにまとめられている。性生活の乱れで妊娠する生徒、乗り気じゃなくて渋々通学する生徒、そして行く意味を見失う生徒・・・。でもいったい、なんでそんな道を進んでしまうことになるのか。

彼らの家庭環境を探れば、ネグレクト(育児放棄)やDVなどで父親が不在、かつ母親も水商売など夜も働かないと生計が立てられない現状があった。中には頼みの母親が病気で働けず完全無収入の家庭もある。つまり、彼らはとても「勉強に集中することができない」家庭環境で育っていたのだ。

にもかかわらず、「とりあえず高校は出とけ」と渋々進学させられ、進学先では風紀を乱すまいと軍隊のような指導を科す高校教師が待ち構える。きちんと向き合わない教師の声に、生徒が耳を貸すはずもない。結果手に入ったのは、社会で通用しにくい「中卒」という肩書き・・・。

これだけ書いても、中卒で働き場所に乏しい、そして性の乱れで妊娠出産する生徒を自己責任と片付けられるだろうか。そんなことは絶対ないと思う。これは環境を作る側にも当然責任がある。

子どもが勉強に集中することができない家庭環境とはどういうことなのか、そしてそこで育つ子どもの行く末は。冒頭で引用した「貧しいとは、選べないこと」という12文字が、ずっしりのしかかる。
 

美達大和・山村サヤカ・ヒロキ『女子高生サヤカが学んだ「1万人に1人」の勉強法』小学館文庫

2018年は勉強法に関する本をたくさん読んだ。前述した『身の丈にあった勉強法』はもちろん、オリエンタルラジオのあっちゃんが書いた『大合格 参考書じゃなくオレに聞け!』、ビリギャルの坪田先生の『どんな人でも頭が良くなる世界に一つだけの勉強法』もすごく参考になった。

そのなかで、この本はちょっと異質な勉強本だった。というのは、指南している美達大和という人は、2件の殺人を犯し仮釈放を放棄することを決めている(=一生刑務所から出ない)無期懲役囚なのだ。

この本は、そんな美達のことを「みたっちゃん」と呼んで親しむ、サヤカちゃんとヒロキくんという高校生と中学生の姉弟による手紙のやり取りで構成されている。姉弟にとって「みたっちゃん」はメンターそのものであり、勉強のやり方から筋トレのことまで、本当になんでも相談している。

そして、どんな悩みにも真摯に回答する「みたっちゃん」のスタンスは実にシンプル。「大事なのはなんでもかんでも「続ける」こと。そこに「頭の良し悪し」はひとつも関係ない。」。・・・これ、書いて気付いたのだが先に取り上げた『GRIT』と共通していることなのだ。

直接会うことはないにしろ、必ず「いつでも応援していますよ」とメッセージを送り、成長にともに喜ぶ「みたっちゃん」の姿勢は、勉強法以上に大いに参考になる。そんな彼がなぜ2件もの殺人を犯したのか、サヤカちゃんに実直に語るパートは必読。
 

まとめ:10冊選ぶのって超難しい

f:id:superexp221:20181228164516j:plain

今年、270冊以上の本を読んだ。もちろん昨年読んだものを再読したものも含まれているが、この中から10冊を選ぶ、というのはめちゃくちゃ難しかった。それくらい、今年は自分の生き方、やり方に大きな影響を及ぼした本とたくさん出会った気がする。

その濃すぎる現代史の解説と鮮明すぎる写真資料に魅入られて池上彰の『そうだったのか!』文庫シリーズを揃えたし、『「この人、痴漢!」と言われたら―冤罪はある日突然あなたを襲う』では痴漢冤罪の対処法もさることながら「相手が言っているその事実をいったん認める」ことの大切さを知った。

いきものがたり』を読んで以降、iPodのプレイリストにどかっといきものがかりの曲を追加したし、『ひとりぼっちを笑うな』で蛭子能収という男の独特すぎる感性に触れた。幻冬舎見城徹社長の『たった一人の熱狂-仕事と人生に効く51の言葉-』は今年1番アツい本だった。

このあたりがベスト10から漏れたのが非常に惜しい。10にこだわらず紹介すべきだったかとすら思う。

昨日ちょうど読み終えた『東大生の本棚 「読解力」と「思考力」を鍛える本の読み方・選び方』には、東京大学の学生というのは非常に「感想好き」らしく、読んだらとにかく感想を残してほかの人と共有することで、自分の思考力の礎とすることが書いてあった。

それは、実はこっそり考えていたことだった。noteや「本が好き!」というSNSで長々書評を書くこともやっていたけど、最近は完璧にサボっていた。なら、逆に簡単に数行だけの書評だけでもまとめておいて、それをその週読んだ本として紹介するのはどうか。それならこのブログでもできる。

来年の読書は、もっとアウトプットにこだわっていきたい。そういう観点で改めて読み直すとまた違った視点が獲得できるかもしれないのだから。

*1:間違いなく二階建てのビスタカーだ!

*2:なかには一面バッタだらけの写真もあります

*3:佐藤氏は埼玉の浦和高校