SH Diary.

旅行記、ときどき野球。

新幹線の窓際には絶対に切符を置いちゃいけない

この間横浜へ行くのに新幹線に乗ったのだが、いろいろあって「ぷらっとこだま」のグリーン車を使うことになった。

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人生初の新幹線グリーン車とあって乗る前の京都駅の時点で妙な浮かれ気分があり、せっかくコンビニに立ち寄ったのに手土産と、あとなぜか龍角散のど飴だけ買って新幹線の改札を通ってしまった。

朝食飲み物もろもろは車内販売で買うかー、どうせ #シンカンセンスゴクカタイアイス やるしなー、と思いつつ新幹線に乗り込み、グリーン車の座り心地に舞い上がっていた矢先に待っていたのは「こだま号には車内販売がございません」という車内放送だった。一気に我に返る。

結局、新幹線1番の目的だった #シンカンセンスゴクカタイアイス は断念し、6分停まった名古屋駅のホームにあったコンビニでようやくおにぎりとお茶、そしてコーヒーを手に入れる。名古屋を出てからそれをむしゃむしゃと食べたわけだが、そのあとにまたたいへんなことを起こしてしまった。

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この新幹線の車中でどうしてもパソコンで作業する必要があって、肘掛けや背もたれのテーブルを引き出して準備をしていた。で、肘掛けから出したテーブルにコーヒーを置こうとしたその瞬間、窓際にちょこんと置いていた新幹線のチケットがふわりと宙を舞った。

そしてそのまま、よりによって肘掛けの中にホールインワン

一瞬何が起こったかわからなかった。数秒後、遅れて頭が「超緊急事態である」ということを理解した。こういうときの人間の行動はよくわからないもので、とりあえず肘掛けの中にある切符を目視で確認するやいなや、その肘掛けの中に思いっきり手を突っ込んだ。届くわけがない。

20秒後、肘掛けから手を抜くと、甲に思いっきり擦過傷ができていた。なんと間抜けな負傷なのか。

続いて思い出したのは、いつかたまたま視聴したこの動画だった。今見返したらこの人がなくしたのも割引で買ってた新幹線グリーン車のチケットである。そういやあの動画では割り箸で引き出してたよな、と思ったのだが、適した棒がない。なんでさっき「山ちゃん」のおにぎり買ったんだ俺。

「あ、これは無理だ」。

芸能人、スポーツ選手ももよく乗っているであろう新幹線のグリーン車というラグジュアリーな世界が一気に地獄と化した。おそらくこのまま救出できずに新横浜の駅で降りれば、まず改札は抜けられない。間違いなくぷらっとこだまの料金ではない、正規の運賃を払うことになる。

ええと、京都から新横浜まで、新幹線、しかもグリーン車っていくらかかるんだ・・・?

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切符の写真で「これ持ってたんですけど肘掛けの中に落としちゃって」とごまかす作戦も考えた。しかしiCloudに保存されていたのはSNS投稿用に大事な情報を全部指で隠した写真だった。この手も使えない。もう、いろいろ詰んでいる。

とりあえず車掌さんに相談することにした。こだま号はすでに三河安城の駅に停まって、後ろから追っかけてくるのぞみをやり過ごしている。

たまさかすぐそばが車掌室だったので事情を説明すると、とりあえず三河安城を出てから来てもらうことになった。そして車掌さんは肘掛けの中の切符を確認するなり、自分が座っていたグリーン席の座面を取り外して作業を開始した。ちなみに隣の席には名古屋からお姉さんが座っている。

座面を外すとグリーン車ってこんな骨組みになってんだ~、とその構造に感動している暇はない。いくら余裕があるとはいえ、隣の席のお姉さんが「この人何やってるんだ」と怪訝そうな視線を車掌さんに送っている。すいません、僕が悪いんです。それを通路で見守るしかできない僕。

どうもだいぶ取り出そうにも奥のほうまで入り込んでしまったらしく、どんどんどんどん車掌さんの顔が険しくなっていく。「空いているところに座ってください」と促されたが、いやそんな心境ではない。でも明らかに自分が通路の邪魔になっているので、とりあえず空席に腰だけかける。

いま僕は、数多走る新幹線の中で一番申し訳なく、肩身が狭くグリーン席を利用している客であろう。うっかり千原ジュニアあたりが同じ車両にいて、「にけつッ!!」あたりで「こないだねー、グリーン車で切符なくした客がおったんですよー」と話のネタにされたらどうしようか。

などと考えていると、車掌さんの上体が一瞬起き上がった。手には薄汚れた新横浜までの「こだま」のチケットが握られていた。それよりも、車掌さんの手は骨組みの汚れのせいかめちゃくちゃ真っ黒けになっていたのが、本当に申し訳なかった。

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ひたすらに頭を下げお礼を述べ、さっさと車掌さんは車掌室へと戻っていった。直後、いい日旅立ちのチャイムとともに「まもなく豊橋です」の放送が流れる。車掌さんが来てから切符が出てくるまで5分くらいだったのか、正確な時間はわからない。

でもあの時間は1時間にも2時間にも感じられた。

その後、切符はなくさないよう上着のポケットに厳重にしまったのは言うまでもない。浜松で団体客が降りても、静岡で隣のお姉さんが降りても、結局申し訳無さと肩身の狭さだけはずっとずっと続いたまま、新横浜まで3時間の「はじめての新幹線グリーン車」は終わりを告げた。

あのときお手数おかけした車掌さん、隣に座ってたお姉さん、本当にすいませんでした。

そして、みなさんは、新幹線の窓際に絶対に切符を置かないように気をつけてください。