SH Diary.

旅行記、ときどき野球。

甲子園で、「令和の怪物」のプロ初勝利を観た

2年ぶりのプロ野球セパ交流戦。今年こそは昨年叶わなかった「鳥谷さんの甲子園凱旋」を鳥谷の00番を着て絶対絶対観るぞ!ということで、関係各所の尽力もあり甲子園3連戦の3戦目のチケットを入手することができた。

そしたらそれが、これ以上ないメモリアルなゲームになるとは、確保の一報が届いたとき何一つ想像だにしていなかった。

いや、たしかに、二木→岩下、と来てその試合がローテの谷間になることはずいぶん前からわかっていた。それに5月16日に先発して試合後抹消された「彼」が再登録可能になるのが甲子園3連戦の3戦目であることも知っていた。

「彼」は高校3年間、実は甲子園の舞台には届いていない。最後の夏は県大会決勝で投げることなく、しかもチームは敗退した。はじめてのビジターがその憧れの甲子園で、しかもプロ初勝利がかかるマウンドなんてあまりにもできすぎた話だ。

この谷間はそんな期待もありつつ、ドラ1ルーキーの鈴木昭汰だったり、実績のある中村稔弥だったり、あるいは2軍から本前とかが結局出てくるんだろうなあ、と思っていた。それが週明け、「木曜日に登板を明言」という見出しの躍ったニュースを見つけ、一気に落ち着かなくなる。

・・・果たして水曜日夕方、正式に予告先発が発表されると、仕事中にも関わらず一気に舞い上がる自分がそこにいた。いや、白状すると、予告先発が出る2時間くらい前から、あまり仕事が手についていなかった。

佐々木朗希、プロ2戦目のマウンドははじめてのビジター、そしてはじめての甲子園。

この日は朝から大雨だったのが、昼過ぎになんとかあがってくれた。あとはもう安心と信頼の阪神園芸さんがなんとかしてくれる。この時点で佐々木朗希は「もっている男」なのだが、このあとさらに彼のあまりに恐ろしすぎる強運ぶりが発揮されることになる。

本拠地ZOZOマリンで迎えたプロ初登板の西武戦は5回4失点、ストレートが常時150km/hを越えているのは「さすが」だった。しかしフォームの大きさゆえにとことん走られまくったのが大きな課題でもあった。源田、若林、金子、このあたりはもう出たらすぐ走ってくるようなレベルであった。

阪神にも近本をはじめ、足の速い選手が多い。このへんの選手をランナーとして背負わなければ、ひょっとしていけるんじゃ?と戦前は思っていた。

しかし。

荻野貴司の初球先頭打者ホームラン(また朗希が投げた日に先頭打者ホームランだ!)で幸先よく1点を取り、その裏を完ぺきに抑えたまではよかったが、2回以降の朗希はピリッとしなかった。大山とサンズに連打を浴びてあっという間にピンチを迎え、

阪神の黄金ルーキー・佐藤輝明にあっさり同点タイムリーを打たれる。さらに勝ち越しタイムリーを打ったのはよりによって相手方の先発投手アルカンタラだった。もっとも佐藤都志也があまりにも外角一辺倒のリードを要求していたこともあったが、これは流石に想定外。

3回にはサンズに打たれ、5回表にエッちゃんことエチェバリアの犠牲フライで1点返すも、その裏またもやサンズにタイムリーを打たれる。ちなみにこの試合のサンズは4打数4安打であった。なんかロッテか佐々木朗希に恨みでもあるのか。

というわけで、プロ初打席含めて2度打席にも立ち5回を投げきったものの、結果は前回と同じ4失点。スコアはロッテ2-4阪神。6回表、荻野があっさり三球三振、マーティンも倒れ、この時点でベンチ前で朗希がキャッチボールをしていないので6回裏は違う投手が出てくることになる。

つまり、あと1アウトでどうあがいてもこの試合で朗希に勝ち星がつくことがなくなる。

しかし、「彼」はやはりそういう星の下に生まれていた。

中村奨吾がフォアボールを選び、続くレアードがヒットでつなぐ。そして角中、とかく阪神戦で印象強い活躍を見せるこの男が左中間へ大飛球。ここまで大活躍のサンズが打球に追いつけず、一塁からレアードまでホームに帰ってきた。

これで同点。とりあえず朗希の負けが消えた。ここで阪神も投手が代わり、続く藤岡裕大。一・二塁間に強烈な打球を飛ばすも、一塁のマルテが横っ飛びで捕球する。万事休す・・・と思いきや、なんと一塁送球が大暴投となってその間に角中がホームイン。

・・・まさかまさか、逆転してしまった。これで朗希の負けどころか、もうないだろうと思っていた「佐々木朗希、甲子園でプロ初勝利」の目が一気に色濃く現実味を帯びてきた。まじかよ。

その後、6回は佐々木千隼(なので佐々木リレーということになる)、7回はハーマンがサクッと抑える。そして8回表、なんとなく打つ予感がしたマーティンが見事左中間にどでかい一発をぶちかましてYes!マーティン。この一発がまあ、デカかった。

このあと鳥谷さんが代打で出てきたが、なんかもう頭の中は「佐々木朗希のプロ初勝利が目前」でいっぱいだった。ちなみに結果は惜しいレフトフライ。もしかして鳥谷さん甲子園最終打席だったのかもしれないと気がついたのは、試合が終わったずいぶん後だった。

8回裏は唐川。前回佐々木朗希の初勝利を消したのが唐川であり、この日もノーアウト2塁のピンチを背負うもそこからの唐川は神がかっていた。佐藤と糸井を空振り三振に抑えて陽川もファーストゴロ。ついに、ついにあと3人。

そして、9回裏、益田がしっかりと自分の役目を果たし、最後はピッチャーライナー。

見ちゃったよ、おれ、令和の怪物「佐々木朗希」のプロ初勝利、見ちゃったよ。

「できすぎた話だ」と思っていたストーリーが、現実のものになった。目の前の出来事を信じることができずに、試合後しばらく甲子園のレフトスタンドで「勝っちゃったよ」「勝っちゃったよ」「まじかよ」と、ずっと口走っていた。

あまりに「見ちゃったよ」の気持ちが強くて、気がついたら井口さんとのプロ初勝利記念のツーショットが終わっていた。そのままヒーローインタビューは、試合前にこんなこともあろうかと買っておいた佐々木朗希タオルを掲げていたら、サンテレビがでかでかと僕を映していたらしい。

「鳥谷さんの甲子園での勇姿を、鳥谷さんの00番で観る」のが本来の目的だった。それが気がつけば、令和の怪物のプロ初勝利という大きな大きな第一歩を見届けることになった。内容より完全に「運でつかみ取った1勝」ではあるが、どういう形であれプロ1勝はプロ1勝だ。

ロッテファンを15,6年も続けていると、思い出深い生観戦なんてたくさんある。新潟で見届けたファーム日本一、西武相手に18点入れた試合、福岡でソフトバンク相手に17点取った試合、安田のプロ初出場、サブロー引退試合・・・。

この日の「佐々木朗希プロ初勝利」は、たぶん生涯見てきたロッテの試合でベスト1だったかもしれない。

緊急事態宣言に伴って、ごくごく少数のロッテファンしか入場できず、もっともっと大勢のロッテファンと喜びを分かち合って ♪マリーンズが~ほんま~に好きやから~ と肩を組んで歌いたかったと言う気持ちはある。しかしそれを差し置いても、ここ数年で一番嬉しい勝利だったのは間違いない。

・・・とりあえず、散々迷っていたブラックサマーTシャツの背番号は、受注締切45分前にして17番の「R.SASAKI」を選んだ。これもなんかの縁だろう。次も必ずこの17番のTシャツと「佐々木朗希」と大書されたタオルを携えて、この「令和の怪物」の連勝街道をとことん追い続けたい。

おめでとう、朗希。これからずっとずっと頼むぞ。