SH Diary.

旅行記、ときどき野球。

広島で被爆電車と美しい瀬戸内海に出会う旅

2022年も無事仕事を納め、しばしの年末年始休暇に突入した。そして手元には、利用開始初日と2日目に使う用事があって早々買った18きっぷがある。

そういえば最近西方面、もっといえば広島あたりがとんとご無沙汰なことに気がつく。お好み焼き、そして「むさし」のおにぎりも久々に食べたいなあと思い、休暇半ばのある日の早朝18きっぷで広島へ行くことにした。
 

京都→加古川→姫路

ところがいきなりトラブルが発生。京都駅で発車案内を確認すると、しょっぱなから乗る予定の快速に「遅れ5分」という赤文字が躍っている。

放送によれば「貨物列車の遅れ」と言うのだが、その貨物列車がなんで遅れているのかまで言及はない。まあこの快速、たしか西明石でえらい長いこと停まるのでその間に遅れがなくなるか・・・と思いつつ乗る。予想通り遅れは大阪駅の時点で2分ほどに収まったので一安心した、矢先だった。

眠りこけてしまいふと目が覚めるとその西明石、時刻は7時半。あれ?とっくに発車時刻を過ぎているのに動く気配がない。しかもまた「遅れている貨物列車を先に通す」という理由で動けないらしい。結局どうやら西明石には15分ほど停まっていたらしく、8分ほどの遅れでようやく動き出す。

予定通り加古川で新快速に乗り換えたがこれも10分近く遅れている。これまたいつものようにわざと一番最後に乗って、姫路で岡山行きに乗り換えやすいようにドアの前をキープしているのだが、計算上、この新快速が姫路に着くのは岡山行きが発車するその時刻。大丈夫かこれ?
 

姫路→岡山

と思ったら、岡山行きは発車を遅らせて待ってくれていた。先の新快速同様10分近い遅れで姫路をあとにしたが、このまま岡山まで遅れを取り戻すことはないだろう。

さて今回岡山で30分近く待ち時間があるので、以前倉敷で行ってハマった「ふるいち」という店のぶっかけうどんを食す予定だった。岡山駅近辺だと新幹線ホームにあるので、わざわざ入場券を買ってまで食べる算段でいた。

で、案の定10分近い遅れのまま岡山駅に着き、残り20分しかない中で急ぎ新幹線乗り換え口で入場券を買いに行くと・・・券売機では「ここまでの切符を入れろ」という表示が出る。18きっぷはこの手の自動券売機に対応していないので、これだと有人窓口へ行かなければならない。

しかしその有人窓口がえらい混み合っている。ようやく自分の番が来て「急ぎで」と慌てて購入した時点で、次の乗り換えの電車まで15分を切っていた。

とりあえず店へ駆け込む。時間的に店内で食すのは無理と判断、ぱっと目に入った「持ち帰りできます」の文字を確認してテイクアウトすることにした。

店を出るとちょうどやってきた「こだま」がハローキティ新幹線。

結局うどんは電車待ちの間にささっと食す羽目に。やっぱりゆっくり店で食べたかったな。
 

岡山→三原→広島

知らない間に岡山から先の乗り継ぎが悪くなっていて、そもそも岡山ですぐ三原行きに乗り換えられるはずが30分弱待つことになっていたり(そのおかげでうどんが買えたのだが)、この先糸崎か三原、どちらかの駅で今度は40分近く待つことになる。

のだが、ひとつ抜け道を見つけたので、ここは躊躇なく裏技を行使することにする。

糸崎で大挙して降りていく、このあと40分待つであろう18きっぷユーザーを後目にそのまま三原まで乗り通す。車窓には美しい瀬戸内海、それを眺めながらスマホである操作を完了。

三原に着くやいなや、そのまま向かったのは新幹線ホーム!

実はこの電車、糸崎や三原から先の広島方面の各駅停車は40分近く待つのに対し、三原では10分の待ち時間で広島方面の「こだま」に乗り換えられる。のなら、別料金で新幹線に乗ったほうが絶対いい。事前にスマホできっぷを予約しておき、新幹線乗り換え口で発券して「こだま」に乗る。

来たのはレールスターだった。そういえば乗ったの初めてな気がするな。

乗った「こだま」は途中東広島駅で15分も通過待ちをしていたが、それでも件の各駅停車より1時間も広島駅到着が早くなるから、やっぱり新幹線って速い。
 

広島駅→紙屋町西

紆余曲折ありながら、今回の目的地・広島に到着。12時過ぎなのでまあ混んでるだろうな・・・と思いながら駅ビルのお好み焼き屋の一帯を覗くとやっぱり長蛇の列だったので、先に観光を済ませることにする。というわけでたまたま停まっていた広電の路面電車に乗る。

紙屋町西という駅で降りる。ちなみにここは原爆ドーム前の1つ手前の駅。

この路面電車がいっぱい来るのが実に広島らしい風景。

本当は、原爆ドーム横にできた「おりづるタワー」の展望台で、来年の地理の授業用に三角州の写真を撮る予定だった。予定だった、というのは、この展望台の入場料が1700円とやたら高額だったから。そのまま平和記念公園へ足を向ける。

そういえば社会科の教員という職業に就いてはじめて来た。

もちろん原爆の子の像にも。

広島市は前述の通り三角州上に広がる大都市で、これは地理の教科書でもよく出てくる。三角州なので細かく橋でそれぞれの島をつなぐ必要があり、その中で相生橋という珍しいT字型の橋が架けられた。結果その形状が上空からでもわかりやすくなり、それが原爆投下時の目標物となった。

地形は時として、歴史を大きく動かす。

原爆ドームのすぐ下には、明らかに手つかずの瓦礫がたくさん落ちている。おそらく1945年8月6日のあの朝からほとんど触れられていないのだろう。この瓦礫を観察するたびに、いつもいろんなことを考えてしまう。
 

紙屋町西→袋町

広島には、1945年8月6日のあの朝にも走っていた路面電車、通称「被爆電車」がいまでも現役で走っている。調べてみると「651」と「652」という車両が該当するらしい。

原爆ドームから広島の市街地を歩こうと本通の方へ向かっていると、追い越していく古めかしい路面電車。ふとその電車に「652」という3桁の数字が刻まれていることに気がついた。

大慌てで目の前にあった駅へ走り、ろくに行き先を見ずにその路面電車に飛び乗る。

あの朝からまもなく80年を迎えるにも関わらず、今でもこうして現役で走っているというのがすごい。

重々しい音を立てて、紙屋町の交差点を豪快に右へ曲がっていく。乗る直前に「広島○」行きというのだけ見えたので駅行きかと思ったらどうやら「広島」行きだったらしい。思いっきり真逆の行き先だった。結局、2駅先の袋町という駅で降りることに。

歩道から被爆電車を見送る。

しかしあとで気づいたが、この被爆電車皆実町六丁目というところまで行けば、かなり大回りながら広島駅行きの路面電車に乗れたらしく、むしろそっちのほうがより長く被爆電車に乗れたことになった。行き当たりばったりの弊害はこういうところに出てくる。
 

袋町→広島駅

とはいえ、もともと市街地を散策したいが先だったので、結局袋町から広島駅までは歩いて戻った。

14時を過ぎているのでさすがにもう店も空いているだろう、と駅ビル内のお好み焼き屋へ向かう。

広島に来るとだいたい行くのは「麗ちゃん」という店なので、今回もそこへ。1組だけ並んでいてまじで!?と思ったら、奇跡的にすぐ入ることができた。

広島のお好み焼きは餅入りが一番うまい。

麗ちゃんの目と鼻の先に、今回の大きな目的の店「むさし」があったので、喜び勇んでおにぎりをテイクアウトする。そして土産もしこたま買い込んで、早くも帰り道の方向へ。

ちなみに広島の滞在時間はわずか3時間であった。
 

広島→広→三原

広島から乗るのは、呉線の「安芸路ライナー」という快速電車。

広島から東方向へ向かうにあたって、山陽本線と比べてこの呉線はえらく遠回りで時間がかかるのだが、とある目論見があってわざとこの電車に乗っている。ちなみにはじめての呉線。呉にも立ち寄りたかったが泣く泣くスルーする。

1時間ほどで広駅に着き、ここで三原行きに乗り換え。この電車がまたスローペースで、途中少し速度のはやい自転車くらいのスピードになったかと思えば、ペシンペシンと線路沿いの枝が電車に当たる音がする。

さらに途中竹原ではなぜか15分も停まっていた。が、このあと「目論見」は大当たりする。

この呉線は、三原まで山を突っ切る山陽本線とは違い、大きく瀬戸内海側をぐるっと回って走っている。で、広島駅の時点で時刻を調べたところ、「これもしかしてちょうど夕焼けと海が眺められるのでは?」とピンときたので、わざわざ遠回りして呉線に乗ったわけだ。

結果、これがビンゴ。忠海駅を過ぎてから出てくる一番海沿いを走る風景に差し掛かると、ちょうど日没直後でオレンジ色に染まる空と穏やかな瀬戸内海、という目論見通りの絶景を見渡すことができた。これはすばらしい。

それを過ぎてから急に小腹が減ったので、広島駅でテイクアウトした「むさし」の山賊むすびを食べる。前回「むさし」を利用した8年ほど前から気になっていたおむすびだったのだが、期待通りの美味さ。広島の人はこんなおむすびを日常的に食べられる環境にあるのか、と思わず羨んだ。
 

三原→糸崎→岡山→姫路→京都

終点・三原に着くともう真っ暗。すぐにやってきた糸崎行きに乗り換えて隣の糸崎、さらに1分乗り換えで岡山へ向かう。

ちなみに三原から1区間だけ乗った糸崎行きは、今回自分が広島から乗った呉線の1時間以上あとに広島を発車する。それくらい呉線経由は遠回りだったわけだが、忠海あたりのあの夕焼けと瀬戸内海を眺められた時点で、十分価値のある遠回りだった。

岡山からは20分の乗り継ぎで姫路行き。座れないと困るのでずっとホームで待っていたが、岡山・兵庫県境を越えるころにはガラガラ。そこで、

「むさし」で買っていたもう一つの弁当、「若鶏むすび」を開く。これは鶏の唐揚げやおかずとともにおにぎりが2つ入ったお弁当。こっちは食べるのは2度目なのだが、やっぱり広島の人はこんなお弁当を日常的に食べられる環境にあるのか、と羨んだ。

それにしても何気なく包み紙に記されたこのフレーズが重い。

姫路からは15分待ちで新快速。これは遅れることなくスムーズに京都までたどり着いた。15時半から23時過ぎまで、8時間近くの大移動。車内でおにぎり食べたりYouTubeの生配信を見ていたりはしていたが、流石に少し疲れた。

久しぶりの広島。呉線に乗らなければもっと滞在時間は増やせたが、それでもやはり時間が足りなかった。次こそはもう少しゆったり回りたい。