SH Diary.

旅行記、ときどき野球。

アジャの涙に、優勝への希望を見た

苦しかった。しんどかった。辛かった。

岩下の感染から端を発した「ロッテ、新型コロナ陽性者複数」の衝撃。蓋を開けてみれば選手では角中、清田、荻野、鳥谷のベテラン勢にショートのレギュラー藤岡、今年大きく出番を増やした菅野、内野の便利屋三木が陽性。さらに岡、和田、小野、東妻、山本が濃厚接触者認定された。

現状、荻野が抜けた1番には藤原が、藤岡が抜けたショートでは西巻ががんばってくれている。しかしこのコロナ禍で元気をなくしていたのが中村奨吾、井上、安田、マーティンといった、それまで主力を張り続けていた選手たちであることは間違いなかった。

正直、彼らの姿を見ていて、どう見ても気負い過ぎだと思っていた。福岡での3連戦を通してタイムリーを打ったのが2本打った藤原だけ。俺がなんとかしなきゃと言う気持ちはわかるが、それが裏目に出て空回りしてしまう。そしてそれをファンが見逃さずに容赦なく「働け!」と叫ぶ。

悪循環もいいところだと僕はげんなりしていた。働け!と叫んだところでなにか変わるわけでもない。打てていないことは誰よりも何よりも本人たちが一番理解しているはずだ。選手もファンも、もっと気楽にゲームに臨まないと、勝てる試合も勝てるわけないだろうと思っていた。

いや、わかる。なんせ残り20何試合で首位と2ゲーム差なんてシーズン、15年ロッテを応援してあまり記憶がない。ハッキリ言って今年優勝できなかったら当分無理だと感じるときもある。でも、そういうときにこそ焦っちゃいけない。ひとつのミス、負けを悔やみすぎる雰囲気がどうにも怖かった。

この2つのツイートは今日の試合中に投稿したものである。このときロッテはすぐ下、3位の楽天相手に3点負けている状況。則本の前にさっぱり打てず、相変わらず「働け!」「打撃コーチクビにしろ!」という声に辟易して、思わずツイートを連投してしまっていた。

正直、このところのロッテファンのタイムラインは、「自分で自分の首を絞めている」行為にしか見えなかった。3点差だけど5点差くらいあるように感じるって、なんでそんな自分を追い詰めるようなこと考えるのか。

その気持ちが通じたか、6回裏ようやくマーティンの内野ゴロで1点を返す。しかし流れるTwitterのタイムラインはクリーンアップがなかなか打てないことに関する嘆きばかり。いや違うだろう。ここは打てなくとも1点もぎ取ったことを評価しなくちゃいけないんじゃないの?

それを払拭するかのように次のイニング、中村奨吾がドカンと一発。更に8回、腰痛から戻ってきた加藤翔平がツーベースでチャンスメイクして、最後は相手の暴投でホームに帰ってきた。これで同点。諦めなければ、どうにかなる。

そして、9回裏。

福田秀平のヒットを足がかりに、アジャ井上が魂の打球を右中間に放った。ホームへの送球より先に福田がホームへヘッドスライディング。これ以上ない劇的すぎる勝ち方だった。

アジャは、泣いていた。

コロナ禍で主力選手がことごとく抜けた。俺が引っ張らなきゃいけないと言う気持ちは強かったはずだ。しかしさっきも書いたが明らかに「気負いすぎ」だった。今日も含めてこの6試合でなんと13三振。まあもとから三振が少ないバッターと言う印象はないが、それでもちょっと多い。

大いに本人も打てていないことは自覚していたと思う。そんなこと誰よりも一番痛感してるはずなのに、「働け!」と言われるたびに「わかってるよ!」と言い返さない選手たちはえらい。だからころプレーで示さなきゃいけない。

あのアジャの右中間の打球には、そうした執念が間違いなく込められていた。

「私情を挟みましてすみません」とアジャはヒーローインタビューで泣きながら話した。僕はそれにもらい泣きしながらええんやぞアジャ、と思った。

苦しかった。しんどかった。辛かった。

でも球場でプレイしている選手のほうが、自分が感じるよりも何万倍もそう思ってたはずだ。昨日まで普通にいっしょにプレイしてた選手が、翌日「コロナ陽性」と言われて姿を消す。自分ももしかして?という恐怖もあっただろう。優勝戦線の中自分が抜けたらやばいという重圧もあっただろう。

そうした気持ち、感情が報われた1勝だった。プレッシャーに打ち勝った一打だった。

このチームは、まだいける。

こんなチャンス、次いつ来るかわからない。今夜のアジャの涙に、僕は優勝への希望を見た。

絶対優勝するぞ。そして井口さんを胴上げして、今夜のアジャのようにみんなで泣きじゃくろう。

まだまだ諦めてなんかいない。