2021年の夏の18きっぷは、半ばここへ行くためだけに買ったようなもんだった。
通勤で大阪駅を利用している。都会はそれはそれで楽しいが、ちょっと息抜きに空気の澄んだ場所に行きたい。となれば、山。そういえば、最近長野県方面がとんとご無沙汰になっている。
そんな折、夏休み明けに受け持っている日本史の授業で江戸時代の五街道の話をすることになりそう。東海道の宿場町なら近隣にたとえば滋賀県の草津とかがあるが、長野方面まで行けば中山道、しかも木曽あたりに趣のある宿場町が点在している。
というわけで、夏季休暇がはじまって早々、数年ぶりに中央線を東へ向かった。
塩尻→松本

とりあえず、松本までやってきた。気温は36度と猛暑日の気温を示しているが、湿気がなくカラッとした暑さなのでとても36度あるとは思えないほど心地よい。

松本まで来たらとりあえず松本城を拝むのが定番。
せっかくなので久しぶりに縄手通りを散策したかったところだが、今回のメインはあくまで木曽の宿場町。今日はここ松本まで来るとあとはひたすら戻るだけの行程になっているのだが、この戻る行程の電車の本数が非常に少ないために、さっさと松本駅へ引き返す。
ちょうど昼時だったので長野名物の「おやき」を食べたいなあと思い、松本駅周辺でおやきが買える店を調べる。すると松本駅の商業施設におやきの店だけを集めた一画があるらしくそこへ向かったのだが・・・ない。たしかにGoogleでは「営業中」となっているのに、一画そのものがない。
結局おやきは断念し、駅の売店で弁当を買い込み次の電車にあわてて乗る羽目になってしまった。
松本→奈良井

松本駅で買った弁当はこれまた長野名物の山賊焼き弁当。カラッとした過ごしやすい暑さとは言え汗がなかなか退かなかったので、山賊焼きに別添えされていた塩が非常にありがたかった。

それにしても、車窓が「夏」だ。

ここからいよいよ木曽の宿場町を見ていく。まずは奈良井宿。ここは奈良井駅から歩いてすぐという非常にアクセスのよい宿場町である。

・・・ああ、こんな風景を眺めたかったんだよなあ、とiPhoneのシャッターが止まらなくなった。

奈良井宿は何度も来ているが、宿場町を抜けるとこんな神社があるのは知らなかった。覗くと、神々しく太陽の光が降り注いでいた。

さっき松本駅で断念したおやきはここでいただくことができた。ついでに五平餅も。やっぱり長野に来たからにはこの2つは外せない。
宿場町の建物を眺めながら、カラッとした夏の日差しの下おやきをいただく。
いいな、木曽路。
奈良井→木曽福島

続いてやってきたのは木曽福島駅。
カラッとした暑さとは言え、さすがに1日暑い中外を歩くとちょっとさっぱりしたい気分にもなる。調べると木曽福島駅の近くのホテルで日帰り入浴をやっているらしい。
のだが、いざそのホテルの前までやってくると次々と宿泊客らしき人たちが建物に吸い込まれているため、これはもう日帰り入浴の時間に間に合ってないのではないか?と泣く泣く断念する。

しかしすぐ近くに足湯があったので、代わりにここに入った。もちろんここで汗を流したわけではないのだが、1日歩き回った足を休息させるには十分。川の音、そしてその向こうの山から聞こえるセミの鳴き声が、疲れた身体に心地よく響いてくる。
いいな、木曽路。

少し坂道を上ればそこはこれまた宿場町、中山道の福島宿。奈良井宿ほどの規模ではないが、ここにも昔ながらの宿場町の建物が残っている。

木曽福島駅を挟んで反対側にイオンがあって、帰りの時間まで少し時間が余ったので立ち寄ってみると、東北信越限定の焼きそば「バゴォーン」を発見。こういう限定モノに弱すぎるので、思わず買ってしまった。でも後日、京都府某所の10分のスーパーでこれが売ってて崩れ落ちそうになった*1。

さらに果物コーナーで、これまた長野あたりでしか見られない「ワッサー」というフルーツも見つけてこちらも購入。桃とネクタリンの交配品種ということだが、ざっくり書けばとても固い桃のような食感で、だいたい固い果物が好きな自分としては非常に好みのフルーツだった。
ちなみにここのイオン、どういうわけか非常に電波が悪く、ここで1件電話をかけようとしたら全然つながらなくて非常に焦った。
木曽福島→南木曽
これであとは帰るだけとなった。ところが、木曽福島駅で帰りの乗り継ぎを調べると、何度調べても途中の名古屋でなんと40分待ちという謎の乗り換え時間が表示される。
要は名古屋で米原行きが来るまでそれくらいの時間がある、ということなのだが、名古屋から米原行きはどれだけ空いても30分に1本はあるはずなのでこれは明らかにおかしい。しかし手前の金山で乗り換えを選択しても同じ乗り換えになる。
なぜだ?と思い、名古屋駅の時刻表を確認すると、これから乗る中央線が名古屋に着く2分前に米原行きが出発し、次の米原行きはその40分後までないという謎のダイヤになっていた。なにそれ!
まあきしめんとか食べたり、名駅をウロウロしていれば40分なんてあっという間に潰れる。しかし夜にちょっとした用があるので、できれば2分差で乗り逃す米原行きになんとかして乗りたい・・・と、ある「奥の手」があることに気がついた。これを使えば件の米原行きに間に合ってしまう。
しょうがないので、その「奥の手」を発動することにした。

木曽福島から乗った普通電車を、終点の中津川まで行かずに途中の南木曽で降りる。

ここから6kmほどいけば中山道でも指折りの有名な宿場町・妻籠宿があるが、この時間だとさすがに行くことはできない。
それと、木曽福島もそうだが、このあたりの観光拠点の駅は、一歩出れば迫る山をバックにちょっとした土産物屋や建物が並んでいる。実はこの風景がかなりお気に入りだったりする。
南木曽→多治見→名古屋→米原→京都

というわけで「奥の手」、特急しなの号に乗る。18きっぷでは乗れないので別料金を支払って乗ることになる。この南木曽駅に停まるしなの号は夕方を中心に数少ない本数しかなく、これがなければこの「奥の手」は発動することができなかった。

ちなみに特急券と切符は中津川行きの車内であらかじめ用意しておいた。南木曽駅には駅員がいなかったのであらかじめ用意しておいたのは大正解。

もちろん名古屋まで行けばもっと速く移動できたが、18きっぷを最大限に活かすために普通電車でも本数が多い多治見でしなの号を降りる。なにやら線路点検があったらしく中央線が遅れていて、あとの電車はすぐにやってきた。しかも、快速。

しなの号のおかげで、名古屋駅できしめんを食べる余裕ができた。

ホームで米原行きを待っていると、向こうの方で花火が上がっているのが見えた。

バゴォーンを手に京都到着。
この旅行で、すっかり「夏の木曽」にドハマりしてしまった。澄み切った青空、心地よい風、木曽川を流れる水の音、風情のある宿場町の建物。そのすべてが心地よく、木曽福島でホテルに吸い込まれる客を目の当たりにして「次は絶対に一泊するぞ!」と強く思った。
・・・そして翌年、奇しくもまったく同じ日に、本当に「1泊2日」で長野に旅立ったのです。