SH Diary.

かつて不登校だったひとが野球や遠出、日常とたまにちょっとまじめなことを書いてます。

4年ぶりにイスラエルの野球を観た

あのイスラエルが、韓国に勝ちそうだ。

WBCのオープニングゲームがソウルで繰り広げられた月曜の夜。帰路の電車でその一報が入ってきたとき、僕は「まじかよ」と思わず声に出してしまった。

だいたい、オランダ・韓国・チャイニーズタイペイと並んでイスラエルが堂々予選A組に名を連ねている時点ですでに驚いていた。下馬評ではおそらく最下位。大半がユダヤに祖先を持つアメリカ出身マイナーリーガーという話だったが、国際大会に初めて参戦する国だからそりゃ無理もないとは思っていた。

やがて、「韓国に勝ちそう」は、「韓国に勝った」という情報に塗り替えられる。

その知らせを家への夜道で知った僕は、煌々と光るiPhoneを手にしばし立ち止まって言葉を失っていた。

それは4年半前に遡る。

残暑が厳しいある朝、家で何気なくネットサーフィンをしていると、UstreamかなんかでWBCの予選がネットで無料配信されることに気がついた。気になる対戦カードは、南アフリカイスラエル。ちなみに、このときのイスラエル代表もユダヤ系アメリカ人のマイナーリーガーが大半だったらしい。

こんなもん誰が観るんだろう、と思いながらも、午前中は予定ないしちょうどいいや、とその配信を観てみることにした。ただ、この時点で僕の興味は、どちらかといえば「南アフリカがどんな野球をするのか」というところにあった。

アメリカのようにパワー一辺倒の野球、ドミニカのように身体能力にモノを言わせる野球、そして日本のように緻密に考える野球。世界には様々な野球がある中で、あまり野球文化が浸透していないアフリカってどんなプレーを見せるのだろう。そこが気になっていた。

しかし、いざ試合が始まってみれば、イスラエルが仕掛ける野球に僕の興味は傾くことになる。それは初回、イスラエルのバッターが豪快なホームランをレフトスタンドにかっ飛ばし、終盤にも猛攻を見せたことも遠因にはなったが、アイスコーヒーをすすりながらひとつ気になっていたことがあったからだ。

あの日のイスラエルの野球は、ハッキリ言って「雑」だった。

例えば、0ボール2ストライクの場面。ここでイスラエルのバッテリーは、必ずと言っていいほど「外角低めに落ちる球」を投げる。裏でコーチが口酸っぱく言ってるんじゃないか、と勘ぐるほど、そのリードは徹底されていた。全体的にピッチャーはノーコン気味でもあった。

そして9回、イスラエルが送り込んだサイドスローのピッチャーがどうにも忘れられない*1。2連続で四球を出し、3人目こそセンターフライに打ち取るも4人目にまた四球。たまらずピッチャーが代わる。さらに代わったピッチャーも押し出しでまず1点を与える。

ここからショートのエラーで2点目、さらになかなかお目にかかれないキャッチャーゴロでもまた1点取られる。つまりこの回、南アフリカはなんとノーヒットにも関わらず3点ももらったのだ。ただ、さすがにその次のバッターは凡退して、結局7-3でイスラエルが勝ったのだった。

この時点でもう、僕は「アフリカの野球」ではなく、「イスラエルの大味で雑な野球」のほうが強く印象に残っていた。さすがは野球新興国同士がぶつかるWBCの予選リーグだなあ、と思いながら、肩肘張らずに気楽に観れる野球に満足して、ブラウザを閉じた。

そして、2017年。

あの大味で雑な野球をしていたイスラエルは、ソウルの地で快進撃を続け、なんとオランダにもチャイニーズタイペイにも勝ってしまった。こうして2次ラウンドが行われる東京へやってくると、とうとう侍ジャパンとぶつかることになった。正直、信じられなかった。

4年半前、0ボール2ストライクで必ず「外角低めに落ちる球」を投げていたあのイスラエル代表が、どう変貌を遂げたのか。侍ジャパンがアメリカ行きの切符を賭けて!というよりも、僕の興味はそこにしかなかった。

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会議があったので、試合開始には間に合わなかった。ただ、どこかの店の大きなテレビが、イスラエル打線をゲッツーに打ち取る侍ジャパンの先発・千賀の表情を捉えていた。

そして家に帰ると、ちょうど筒香が先制ホームランを打った直後だった。なんでもいいから日本勝て!!という実況からのプレッシャーが多少軽減された状態で、イスラエルの野球が観られると思うと、どこかホッとした気持ちになる。

松田がタイムリーを打って、続く小林のあたりはボテボテのゴロ。しかしサードとピッチャーが重なってわずかに送球が逸れた。判定はセーフなのだが、勢い余って小林が一塁から飛び出している。何してんの小林!

と思ったのもつかの間、イスラエル一塁手が小林を追っかけるうちに判断に迷い、あわてて松田が帰塁したサードに投げるがなんとセーフ。その間にしれっとセカンドベースに立つ小林。結局このプレーでイスラエルはアウトをもぎ取ることができなかった。

このとき僕は、あの日観たなんとも言えない雑さが、4年半経ってもまだ健在なことを確信した。

その後また満塁になり、青木・筒香と左が並ぶ場面でピッチャーが左腕に代わるが、このピッチャーの初っ端1球目が青木の腰に直撃する。ピッチャーがコントロールに苦しむところも、4年前とさほど変わっていない。ただ、0ボール2ストライクで必ず「外角低めに落ちる球」は、投げなかった。

結局、イスラエル旋風は2度目のオランダ戦でよもやのコールド負けを食らってピタリと止まり、アメリカ行きの切符は夢へと消えた。しかし今年のWBCで台風の目として世界の野球ファンを驚かせたのは事実だろう。

またこの大舞台に帰ってきたとき、彼らはどんな野球を見せてくれるのだろうか。ポテンシャルを引き出せば、きっと列強に割って入れるぐらいのチームは作れると思う。

大味で雑なのがどこか憎めないイスラエルの野球の今後が、ちょっと楽しみになった。

*1:今調べたら、シュロモ・リペッツというベテランのピッチャーだった

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