SH Diary.

旅行記、ときどき野球。

鳥谷が2割5分打ってたら阪神は絶対手放していない。だからこそ求めているものがある。

通算2085安打。13年連続試合出場。関西人なら誰でも知ってる、阪神のレジェンド。

一昨日書いたレアード以上に来るとは思わなかった選手がこの春、千葉ロッテマリーンズにやってきた。

10年ぶりくらいにスポーツ紙を買った。というかデイリースポーツを狙い撃ちで買ったの初めてかも。

鳥谷である。あの阪神の鳥谷である。あの甲子園の大観衆が ♪さぁ君がーヒーローだー とりたにたーかーしー って歌ってた、あの鳥谷である。

あれだけの成績を残しキャプテンも務め、名実ともに阪神の「顔」だった鳥谷が戦力外になったことは当然知っていた。正直、前年のレアードのように「獲ってもいいんじゃないのかなあ」とは思っていた。しかし春になり、オープン戦も(無観客で)始まり、こりゃないかーと思っていた。

それゆえ、「ロッテ、鳥谷を獲得へ」の文字がYahoo!ニュースに躍っていた朝は、まさに青天の霹靂だった。ちなみにその日僕は転職先の面接だったのだが、もう少しでその面接がどうでもよくなってしまうほどに「鳥谷」の文字が頭を埋め尽くした。

しかし高濱卓也柴田講平と並んで「阪神からロッテに来た背番号00の系譜」に鳥谷敬が加わるとは本当に誰が想像したか。

阪神ファンの友人知人からは一斉に「鳥谷をよろしく」と連絡が来たし、「せやねん」や「こやぶるスポーツ」など関西ローカルのスポーツニュースでも盛大にロッテに入った鳥谷のインタビューを放送してくれて、余すところなくチェックした。

そして今年の交流戦は甲子園のターンだ、ということで、受注生産の「TORITANI 00」のTシャツも注文した。当たり前のようにこれを着て甲子園に乗り込むつもりでいた。

ところが件の新型コロナウイルスである。

5月、その「TORITANI 00」のTシャツが届いたころには、もうすでに交流戦の全試合中止が発表されてしまった。つまり今年鳥谷を甲子園で拝むには、阪神対ロッテの日本シリーズが実現しないと無理、ということになる。

正直、獲ったはいいが来年も鳥谷が1軍で戦力になっているかどうかは未知数である。ちょうど10年前、同じような形でやってきた今岡は、初年度こそ右の代打DH枠で渋い働きを見せたが、最終年は2軍兼任コーチ就任もあって1軍に上がることはなかった。

こういう「戦力」もあるのは確かなのだが、それにしたってやっぱり甲子園で、Marinesのユニフォームで阪神相手に一泡吹かせる鳥谷が何が何でも観たかった。来年も鳥谷がこのユニフォームで1軍にいて、かつ来年の交流戦が甲子園であることを、今はただただ祈るしかない。

そういえば甲子園で鳥谷のサヨナラ犠牲フライなるものも目撃していた。2015年6月3日、ロッテが1イニングで8点差を追いついた日。

さて、ロッテにやってきた鳥谷は、開幕直前の練習試合にもコンスタントに途中出場はしていたが、27打数立ってたったの1安打という成績に終わっている。どうなることやらと思ったが、開幕一軍には残ってくれた。

実はこのことはファンの間でかなり賛否両論があった。普通に考えたらこんな成績のバッターはまず見切りをつけられる。下には平沢大河など、それこそロッテの将来を担うような選手がたくさんいるわけで、そっちを優先すべきだろうという声もよく見られた。

なにより、鳥谷は現役時代の井口監督と毎年自主トレをする関係性でもある。だからこそ井口の贔屓采配などといった辛辣なコメントもあった。

でも、ひとつ冷静に考えてほしい。

鳥谷が2割5分打ってたら、まず阪神は絶対手放していない。

それどころかあんなぶっきらぼうに引退勧告せずにもうちょっと手厚く功労者として道を用意してるはずだ。

つまり僕は、たとえ2000本安打を達成したレジェンド打者だとしても、鳥谷にシュアな打撃を期待しているわけではない。もちろんここぞの一本が出たらそれは非常に嬉しい話ではあるが、そこの戦力として鳥谷を獲っているわけではないはずだ。

そして、「そうだよ!その役割だよ!」と言う瞬間が、さっそく開幕カードで見受けられた。

3戦目の9回裏、マウンドには2日前にサヨナラタイムリーを痛打されてしまった移籍2試合目の小野郁。よりによってその回の先頭打者はそのサヨナラタイムリーを打ったホークスの栗原だったのだが、1球もストライクが入ることなく栗原を歩かせてしまった。

4点差あるとは言え、そのあと今宮・柳田・バレンティンと厳重警戒のバッターが続く場面、ここでさっとマウンドに駆け寄ったのが鳥谷だった。そしてその効果は絶大で、続く今宮をゲッツーに仕留めてなんとか逃げ切ることに成功したのだった。

あそこで小野に誰も声をかけていなかったらどうなっていたか。あの場面で鳥谷が即座にマウンドへ駆け寄ったのは本当に大きかった。鳥谷に期待しているのは、こういう部分なのだ。

鳥谷にとっては大学の後輩に当たる中村奨吾やショートを守る藤岡裕大、ルーキーの福田光輝に先述した平沢大河・・・ロッテの内野陣にはめちゃくちゃ楽しみな選手がたくさんいる。彼らがもう1段階上に行くためには、ベテランの生きた教材が必要だと思っていた。だから鳥谷だったのだ。

小野に声をかけに行く鳥谷の姿を見て、若手の内野手がどう感じたか。何を考えたか。こうした背中を鳥谷にはどんどん見せてほしい。だからこそ鳥谷には打てなくても一軍にいる価値がある。こうした姿を求めている。

今日もロッテは勝った。しかも2試合連続の逆転勝ちで4連勝だ。2試合とも初回にレアードが先制ホームランを打っている。しかしやっぱり、ベンチに鳥谷が控えているという安心感があるというのが、今年の千葉ロッテマリーンズが一味違う要因だと思う。

鋭いスイングを見せてなくても、夢乗せてはばたいた君がヒーローだ、鳥谷敬。日本一を決める舞台で阪神相手に、甲子園球場で渋く光る姿を観たい。死ぬほど観たい。

お題「#応援しているチーム