大阪から徳島まで、和歌山経由フェリーで2500円で移動できる「好きっぷ」という切符がある。
和歌山から徳島までのフェリー自体がほぼ同じ運賃なので、この切符を使えば実質難波から和歌山までの南海電車の運賃が浮いてしまうという凄まじい乗車券である。しかも2023年10月より値上げして2500円になっており、それまでは2200円、さらにもっと前は2000円で発売されていた。
そういえばフェリーって久しく乗っていない、かつ徳島「市」にもあんまり行ったことがなかったので(鳴門の「大塚国際美術館」なら昨年行った)、平日休みのタイミングでこの切符を使うことにした。
なんば→
今回のスタートは南海なんば駅。まずはここで徳島まで向かう「好きっぷ」を購入する。
和歌山港を8時25分に出るフェリーに乗るには、平日のなんば駅7時2分の急行に乗ればうまい具合に乗り継げる。のだが、その1本前、7時ちょうどにこんな電車が出ることに気がついてしまった。
このかっこいい電車は、関西空港行き特急「ラピート」。
もちろんこの電車は和歌山方面には行かないが、逆に言えばこれに乗って途中で降りてしまうという移動もできるわけで、ゆったり朝食もとりたかったので思い切ってラピートで先回りすることにした。ちなみに特に意味もなく、追加料金払ってスーパーシートへ。
そういえばラピートには初めて乗った。この丸い窓が斬新。
→泉佐野→みさき公園→和歌山市→和歌山港
和歌山へ向かう場合、このラピートに乗れる限界の駅は泉佐野になる。なんと天下茶屋から泉佐野まではすべての駅を通過しつつ、難波から30分弱であっさり降りる時間に。
関空方向へ向かっていくラピートを泣く泣く見送り、隣に停まっていた普通電車に乗り換える。どこかであとを追っかけてくる元々乗るはずの急行に乗り換えないとまずい気がするのだが、初めて乗る区間ゆえにどこで乗り換えればいいのかがいまいちよくわかっていない。
結局みさき公園駅で件の急行が先に出るということで乗り換える。しかし結局、この普通電車を和歌山市駅まで乗り通しても2分乗り換えで和歌山港方面の電車に乗り換えることができていたので、ここでの乗り換えはそこまで意味がなかった。
泉佐野から和歌山市までは40分くらいかかったのに、和歌山市から和歌山港まではひと駅で着く。
フェリーの出航5分前という絶妙なタイミングで切符にハンコを押してもらい、いざ乗船。
和歌山港→徳島港
和歌山~徳島の所要時間は2時間強。それゆえに売店のたぐいはほぼ営業しておらず*1、本当に必要最低限の設備しかない。食事はカップラーメンや長期保存のパンが自販機で売られている程度。船内レストランのようなものはない。ラピートで朝食を済ませておいてよかった。
朝早かったので雑魚寝スペースでウトウトしていると、気がついたらフェリーは離岸して紀伊水道を進んでいた。雑魚寝スペースにいる大人は大半が寝落ちしていたが、家族連れの子どもがたいへん元気で遊び回っている。
ウトウトしていたとはいえ、流石にこの天気の良さは外のデッキでぼんやり海を眺めないともったいない。だいたい今回の旅はこういう海上の風景でリフレッシュするのが何よりも楽しみだったのだから。
気持ちの良い青空が広がっているが、このあとこれが嘘のような天候になる。
また雑魚寝スペースに戻って少し眠っていると、気がついたら向こうに徳島が見えてきた。
下船直前、しゃきっとした身体で降りようと、紙カップの自販機でリアルゴールドとカルピスを混ぜたドリンクを買ったのだが、リアルゴールドの炭酸が強すぎて泡だらけになっていて、実質カップの半分くらいしか入っていなかった。こういう運の悪さがこのあともちょこちょこ出てくる。
徳島港→徳島中央公園・裁判所北
10時半ごろに徳島港へ着岸し、15分ほどの乗り継ぎでバスに乗り換えて徳島市内中心部へ向かう。このバス、一般的な路線バスなのだがPayPay払いに対応しており、いつも小銭を用意するのが面倒な人間からしたらものすごく有難かった。PayPayで運賃払うのもっと広まって欲しい。
さて、徳島へ来たはいいものの、今回の旅は「フェリーに乗る」ことでその目的を8割は達成しているので、徳島でこれといってやることがない。とりあえず近々ある授業の資料写真(別にどこでも撮れる写真)を撮るのに、徳島駅の手前のバス停で下車し、歩いて徳島駅方面へ向かう。
徳島駅に着くと11時半ごろ、少し早いがここでランチタイムとする。
徳島に来たならやはり徳島ラーメンはおさえておきたい。ただ「東大」は京都駅ビルにも入っているので徳島に来ないと食べられない店がいいなと思い、「いのたに」へ行く。本店が徳島駅から10分ほど歩いたところにあり、行ってみると駐車場が混み合っていたが、席は奇跡的に空いていた。
徳島ラーメンはやはり生卵を落とすのが定番。そしてラーメンライス。
ラーメン自体は豚骨醤油で、なんとなく紀伊水道の向こう側、和歌山の井出商店を思い出すようなラーメンではあるが、チャーシューではなく甘辛く味付けされた豚バラ肉がのっている点が決定的に違う。この豚バラがうまい。これだけでもご飯が進んでしまう。
食後は眉山へ。
ふもとの阿波おどり会館から頂上に向けてロープウェイが出ているのだが、あえて片道は歩いて頂上を目指してみることにした・・・が、想像以上の山道。つけていたスマートウォッチがランニング並みの心拍数を記録している。
しかも正しい道か自信がない道に来てしまった。調べると100mごとに石の目印があるらしいのだが、そんなものを見た記憶がまったくない。最近日本中の山道にクマが出没しているという話もあり余計に不安になっていると、目印がようやく見つかった。気がつけば400m来ていたらしい。
頂上は清々しい風景が広がっていた。
もちろん戻りはロープウェイ。
徳島駅へ戻ってきた。
駅のセブンイレブンで買い物を済ませていると、どうも瀬戸大橋線が悪天候でストップしているという放送が耳に入る。こちら徳島はまだきれいに晴れているので不思議に思いつつ、駅の裏手にある徳島城跡に整備された徳島中央公園へ向かう。
さっきセブンイレブンで買った徳島銘菓「金長まんじゅう」を休憩時に食べていると・・・
あっとこれは嫌な予感。
みるみるうちに大雨になってきた。慌てて傘を取り出す。
10分ほど前の徳島駅前です。 pic.twitter.com/8ueoNj1MIS
— Shun (@ma_ru_ko_me) 2023年10月27日
徳島駅前→南海フェリー前
どっちみち16時25分発のフェリーに乗る予定でいたのだが、どうにも雨が止む気配を見せないので、徳島駅で土産を買って早々とフェリー乗り場へ向かうことにした。結局徳島で何をやってたのかよくわからぬまま帰ることになったが、前述のようにフェリーが目的なのでまあいい。
しかし徳島港の南海フェリー乗り場でバスを降りたらすっかり雨が上がっていたのにはずっこけそうになったが。このまま40分ほどフェリー乗り場で時間を潰さねばならない。
帰りの「好きっぷ」を購入してふと外を見るとちょうどフェリーが入港してきた。この「かつらぎ」は朝乗ったものと同じフェリーのようだ。ちなみに徒歩で乗船しようとしている客はほぼ全員が「好きっぷ」の利用者だった。
徳島港→和歌山港
朝乗ったとき、雑魚寝スペースにちょうどいい場所を見つけていたので帰りもそこがいいなと思っていたのだが、徒歩乗船2番目に乗ったにも関わらず1番目の客にそのスペースを取られてしまった。仕方がないので別の端っこのスペースを確保して横になる。
さっきまでどす黒い雲が覆っていたのに、徳島港を離岸するころには太陽がまた顔を覗かせていた。やっぱりあのゲリラ豪雨は余計だったが、これは帰りにきれいな夕暮れが見れるかもしれない。
遠くに大鳴門橋が見えてきた。その右に見えるのは淡路島だが、淡路島の手前には沼島という小さな島が見えている。子どもの頃、島田紳助の司会でしょっちゅうお見合いの番組をやっていたイメージが強い島だ。
しかしこのあと、(行き同様子どもが騒がしくする中)完全に眠りこけてしまい、気がつけばほぼ夕日が沈んでしまっていた。おまけに友人から「南海電車が運転を見合わせている」という、あまり聞きたくない情報まで届いている。
あのゲリラ豪雨、かつ瀬戸大橋線が運転見合わせという天気なのでフェリーが大荒れでなきゃいいなあと思っていたが、確かに行きよりは揺れたものの酔うほどでもなく無事和歌山港に着岸。
フェリーが着く15分後に特急「サザン」があり、これに乗れば20時すぎに難波に着く。下船の直前に南海電車の運転見合わせは復旧したという情報も入ってるし、せっかくだし指定券取るか・・・?という思案は、和歌山港駅の改札にたどり着いた瞬間もろくも崩れ去った。
「特急サザン、運休となっていまーす!」
和歌山港→和歌山市→難波
ちなみに特急サザンが来ないとフェリーが着いてから1時間は電車が来ないことになるので、これなら和歌山市駅まで歩くのも選択肢になってくる。しかし和歌山市駅まで歩けるか確認すると「次の電車が19時10分くらいに来る」と駅員が言う。
そんな電車は時刻表を見てもなかったのでおそらく臨時に出しているもののようだが、それでも20分くらい空く。「たぶん電車に乗ったほうが早い」と付け加えるように言われたので、仕方なく周囲に何もない和歌山港駅で20分待ちぼうけ。
結局電車は19時15分ごろにやってきた。
和歌山市駅に戻ると15分前に出たはずの急行が停まっていたのでとりあえず乗っておく。しかしこれが最後まで追い抜かれずに難波まで先に到着。結局着いたのは20時40分、乗ってきた急行はホームを移動している間にさっさと折り返していった。
さすがに空腹だったのでなんばウォークの中央軒で皿うどんとチャーハンを食べて終了。
珍しく目的地より行く手段がメインだったので観光らしい観光はしなかったが、普段乗らない乗り物に乗れ、海の空気をめいいっぱい吸い、かなりリフレッシュした旅行になった。疲れたらフェリーで気分転換はありだな、と次に乗るフェリーの目星をつけ始める自分がそこにいる。