野球を観に行ってきた。
というのは、8月半ばまで変則的に「同じ球場で6連戦」という日程が組まれた今年のパリーグにおいて、我らが千葉ロッテマリーンズが大阪で試合をするのが今週だったからだ。
で、最初は「まあ別にいいか」と思っていたのだが、月末の大阪3連戦の参戦が微妙になったこと*1と、水曜日の試合でやけにつながる打線をテレビ中継で観ていてウズウズしてしまい、急遽いつもいっしょに観ている仲間にチケットの段取りを手伝ってもらい、翌日の試合を観に行くことにした*2。
まあ、負けたんですけども。
オリックスのセカンドの福田周平*3が実に絶妙なポジショニングを取っていて、ことごとく一二塁間を打球が抜けなかったのが非常に痛かった。角中はタイムリー1本損してたしな。先発の岩下は悪くはなかったが、それ以上にオリックスのピッチャーが良かった。
とまあ、試合結果はさておき、ここでの本題は「いま球場で何が起こっているか」である。
入場~試合開始まで
まず最初に、これから書くのはすべて「京セラドームでのオリックス主催試合」の話であって、他球団や他球場ではまた違った感染防止対策が取られているということを念頭に読み進めていただきたい。
入場時の検温
入場するにあたってまずは検温がある。これは三脚にセットされたスマホのような機械の前に立つだけ。さらに入場時には大阪府がやってるコロナ追跡システムのビラを渡された。どうもこれは半ば強制的に渡すような段取りになってるらしく、スルーする客にも押し付けるように渡していた。
各ゲートごとには常時係員がいてアルコール消毒するよう促される。それはいいんだけど係員によって対応がまちまちで、あるゲートは客側がポンプを押して消毒してたのに隣のゲートだと係員が消毒のポンプを客の手に向けて押していたりもした*4。
マスク
絶対着用がルールというのは聞いていたのだが、これがかなり厳しい。食事中や水分補給時は大目に見てもらえるが(じゃなかったら熱中症でみんな倒れるわな)、それ以外でマスクを外していたら速攻で警備員が飛んでくる。
完全に外すのはもちろん、食事もしていないのにマスクを顎元までずらして鼻と口を覆わない状態にしてもダメ。この状態で帰ろうとした兄ちゃんが「マスクつけてくださいねー!」と警備員に注意されている様子も目撃した。
おそらくこの分だと、マスクを着けることによる息苦しさでちょっと外してもすぐ誰かしらが飛んできて注意されると思われる。職業柄、マスク着用による体調不良に敏感なところがあるので、そういった場合の段取りはすごく気になった。あと肌かぶれとかでマスクつけられない客への対応も。
座席
席は全席指定、かつこんな感じでソーシャルディスタンスを保つためにほかの客と前後1列・横2席空けた配置になっていて、チケット購入時点で座っちゃいけない席はブロックされている。で、ブロックされている席に座ろうもんならこれまた容赦なく警備員が飛んでくる。
たとえば球場内で知人に出くわして、雑談すべく空いてるからと適当な空席に腰掛けたらもうダメ。すぐに警備員が飛んできて自分の席に戻るよう注意される。この日はたまたま2列後ろに知人が座っていたのだが、知人が僕と話そうと一列降りただけですぐ警備員が「戻れ」とやってきた。
なかには2席間隔を空けずに座っていて、警備員に「2席間隔空けて指定席にしてるはずなんですけど」とえらく回りくどい注意を受けている3人組も見かけた。ちなみに、空いてる席に荷物を置くぶんにはまったく怒られない。
あと京セラドームの外野席はこんな感じでメインビジョンが死ぬほど見づらいという欠点があるのだが、前に出てこのビジョン全体の写真を撮ろうとするだけで「席戻ってください」と言われてた客もいた。最前列に人が溜まるのを阻止する意図があったらしいがでも見えないんだぞ、とは思った。
試合中
応援歌の合唱がNG
ということで、プレイしている選手の声がよく通る。この状況が続けば、たぶんフライを追っかけて交錯する、みたいなシーンは起こらないような気もする。
当たり前だが野球選手ってほんと良く声出してるなあと思う。外野のスタンドにいてもベンチの声がめちゃくちゃ響く。レフトの選手がフライを捕るのにオーライオーライ言う声が聞こえるのはまだわかるが、あんなベンチの声まで聞こえるとは思わなかった。
それと、バットに当たる音、とりわけ「いい当たり」のときの音がよくわかるし、ピッチャーが投げたボールがキャッチャーミットにズバーン!と収まる音もクリアに聞こえる。静かに野球を観たいなら、たぶんいまが狙いどきだと思う。
「応援歌の合唱がNG」ということで、応援側は基本的に声で選手を後押しすることができなくなる。となると、場内でもしきりに促していたが、基本的に「拍手」くらいしか応援する手段がない。これについては感想の項で後述する。
応援歌こそ禁止になっているが打席入場曲は普通に流れるので、たとえばオリックスであれば福田は相変わらず「ばーりーばーりーさーいーきょーナーンーバーワーン!」を流して打席に入ってくる。ホームチームであればこのへんの手拍子応援が結構貴重になってくるかもしれない。
口酸っぱく感染防止ルールをアナウンスされる
ほとんどのイニング間で何度も感染防止ルールのアナウンスがある。オリックスのマスコット、バファローブルとバファローベルも出てきてアナウンスするイニングも1回あった。
ちなみにこのほかにも係員が看板を掲げて感染防止ルールを徹底するように促している。
大声NG
実は僕が観戦にあたって一番恐れていたのがこれだった。
というのは、普段家で中継観てても「うわっ!」とか結構大声を出すタチでよく家族に煙たがられる。こないだ、レアードがどん詰まりのレフトフライを打ち上げたときも一瞬ホームランかと錯覚して「おっ!」と叫ぶほどだ。だからこそ、「大声出すな」と叱られるんじゃないかとびくびくしていた。
これ、結論から先に書くと、まったく叱られなかった。
というか、そもそも家での大声は球場での大声に該当しないということがよくわかった。要は、たとえば中村奨吾が打席に入るとして、「しょおおおおおおごおおおおおおおおお!!!!うて゛えええええええええええ!!!!」とがなるように叫ぶあれがたぶんNG。流石に家ではこんな叫ぶことはない。
ちなみに大声NGとあって球場内はめちゃくちゃ静かで、さっきも書いたが選手の声がよく通るのはもちろん、大きな音で流れるBGMのあとの一瞬の静寂もものすごい。「あれ?いまオレ京セラドームのレフトスタンドでロッテ応援してるんだよな?」と不安になるレベルでしーんとする。
ラッキーセブン
一応ラッキーセブンの催しはある。We love Marinesが普通に流れるが、もちろん ♪しょーりのーよろこびはー おーおーなみとなーってー っと歌っちゃいけない。座った状態でタオルなどを掲げるくらいしかできない(「座席」の最初に貼った写真がまさにラッキーセブンの様子である)。
オリックス側は球団応援歌「SKY」のダンスタイムがラッキーセブンの通例だがこれもやっていない。これももちろん普通に流すだけだった。
売り子
「ビールいかがっすかー」という声ももちろん厳禁である。酒の売り子は最前列をウロウロして、適度に手を挙げて買う客がいないか確認する。で、客はそれに反応すると、売り子が上がってきて売ってくれる。ちなみに7回裏で酒類の販売が終わる。
どこからともなく現れて、本当に黙って手を挙げて買う客がいないか確認するので、たまにびっくりすることもあった。
試合終了後
規制退場
試合が終わったらその場に留まるよう指示される。そのうえで、席の位置によって「こちらのお客様は○番ゲートへ」などと誘導される。
これは出口が密にならないようにということらしいが、正直な話これだけの客数で密になることあるか?と言う程度しか客が入っていないので、効果のほどはよくわからない。
ちなみにどうもその客の終電の時間が迫ってる中でも席にとどまるように指示されるらしく、終電が心配ならば絶対に試合を最後に見届けることを捨てたほうがいい。この日は割とスムーズに退場したが、試合がもつれてまあまあ遅い時間になったらモメそうだなあとは思った*6。
まとめ
試合中も含めて常に複数名の警備員や係員がウロウロしてるし、マスクや座席の項で書いたがちょっと感染防止対策から外れる行動を取るとすぐ注意される。観戦自体は楽しかったが、なんかそんな監視の目が光る中で野球を観るのはかなり息苦しさを感じたのも事実だった。
これは僕個人の考え方なのだけど「なんのために感染対策してるんだろう?」ということがイマイチよくわからない対応があったのも事実で、いやそこまでやる?と感じた瞬間が多々あった。あそこで警備員になんでやってんの?と聞いても最適解は出てこないんだろうなあ、とも思った。
その息苦しささえ除けば、ソーシャルディスタンスを保った観戦は非常に快適そのものであって、こうやってのんびりと野球を観るのは楽しいなあ、とも感じた。点が入ったときにハイタッチができない、みたいな寂しさこそあるが、これはこれでおもしろさはある。
前述したが、本当に今はのんびりとプロ野球を観ることができるので、静かにゆったりと観戦したいなら今はものすごくオススメである。これも後述するが「応援」があるからゆえの揉め事が起こる心配もない。いわゆる「球音」を楽しむこともできる。純粋な野球好きなら天国そのものだ。
ただ、いま球場に足を運べるのは、こうした厳しい目に耐えうる人だけであるのは事実だと思う。実際この日も大なり小なり揉め事を目にしていた。球場側も感染防止対策を守れない人は3度の注意で退場を促すようだし、感染リスクはもちろんそうした雰囲気がしんどく感じる人は足を向けないほうがいい。
こうした雰囲気がいつまで続くのか。シーズン終わるまでに鳴り物や大声での応援が解禁されるのか。まったく状況が読めないが、いま野球観戦をするかどうか迷っている人がひとりでも多くこれを読んだ上で判断材料にしてくだされば、すごく嬉しい。
おまけ:こんな中でも観戦した感想
ロッテファンとして球場に通いだして15年近く経つが、1軍の試合をはじめからおわりまで声を張り上げることなく見届けたのは初めてだった。
正直、もどかしい。たとえばこの試合、7回裏にピッチャーの永野が満塁にした場面があった。応援があるなら間違いなく「なーがーの!なーがーの!」と永野コールを発動させる場面だが、大声NGなのでそれができない。結局、永野に向けてエールを送るには、拍手をするしかなかった。
スタンドから送られる拍手には賛否両論がある。耳障りだとかいう声もあったが、あれはもうどうしようもないのかなと思う。だって外野から選手に届けられる音が「歓声」か「手拍子」しかないのだから、自発的に応援するなら必然的に客は手を叩くことしかできなくなる。
僕も最初「やるの?」と疑問だったものの終盤は手を叩いていた。それしか応援していることを表現する手立てがなかったからだ。もっとも「L!O!T!T!E! オー!ロッテ!」のリズムの手拍子とか、ふだん応援でやってる手拍子のリズムを統率する人間がひとりいたほうがいいのは事実だが。
相手の選手に応援というプレッシャーを掛けられないのももどかしい。でもこれは逆の立場でも同じで、さっき書いた永野の満塁の場面もオリックス応援団は確実に「♪空へと舞い上がる光が~」ってチャンテやってただろうし、そこの圧がなかったと言う点ではチャンスの怖さを感じなかった*7。
いまの球場には、「応援を楽しみにしている層」がほとんどいないはずだ。そもそも応援歌禁止なので「なんでチャンテやんねーんだよ!」と言う文句を聞くことはないし、そこで殺伐とした雰囲気が流れることは、今のスタンドではまずない。これはこれで気がラクなところは正直ある。
なにせ僕は、応援も楽しみだけど、やいのやいのファン仲間と予想しながら観る野球が大好きなのだ。「ここの若月はちょっと怖いっすよねー」「7回誰出します?チェン?小野?」「あれは回り込んで捕ったらあかんやつや」、みたいな話をしながら観る野球が大好きなのだ。
それで、勝っても負けても、試合後に試合を淡々と振り返るあの時間に、野球観戦の醍醐味が詰まってるのだ*8。勝ったときはもちろん楽しい。でも負けても「流れきた!思ったら、ヒギンスとディクソンがキレッキレで全然アカンかったわ」みたいな話が、なんか楽しいのだ。
5000人制限がかかっても、警備員や係員の厳しい目が光ろうと、そこの楽しさだけは担保されている。それを発見できただけでも、この日球場に足を運んでよかった、と思う。
でも、この光景が次いつ観られるか見当もつかないのは、やっぱりちょっと寂しいものがあるな。
*1:これを逃すと10月末のシーズン終わりまで大阪での試合がない
*2:中継観ていて上限5000人に届くわけがないという客の入りも判断材料になった
*3:うちの福田秀平もがんばってほしい、ソフトバンクのときこんな選手じゃなかったろう
*4:消毒しようとポンプ押そうとしたらいきなり係員が突然ポンプ持ち上げたときはビビったよ
*5:でも日本ハムの杉谷が最近よく君が代熱唱してネタにされてるよな・・・?
*6:もっとも今年は延長10回打ち切りなので23時とかになることはほぼないと思うが
*7:ちなみに結果はショートゴロで永野はピンチを切り抜けていた
*8:僕はこの時間を、勝った日は「祝勝会」、負けた日は「反省会」と呼んでいる