SH Diary.

旅行記、ときどき野球。

2023夏・東北社会見学ツアー【その5:陸前高田→京都 900km超バス移動】

その4はこちら↓

陸前高田気仙沼

まだ立ち寄る場所はいくつかあるが、実質的にここ陸前高田駅から京都駅までひたすら移動する行程がはじまる。現在時刻は正午、京都到着は翌朝6時。乗りっぱなしというわけではないのだが、この18時間でバスを3本乗り継ぐという、ある意味過酷なルートである。

東日本大震災の大津波により、このあたりを走る大船渡線の設備はすべて流され甚大な被害が出た。結果、「鉄道」として復旧することは断念し、かわりにBRTと言われるバスの一種として運行されることになった。それゆえ「陸前高田駅」という名前ながら、この駅にはバスしか来ることがない。

本当はもう1本遅い便に乗る予定だったのだが、BRTの発車時刻8分前という絶妙な時間に間に合ってしまったので、1時間予定を前倒しして陸前高田を離れることにした。

BRTになってから道の駅高田松原に設けられた「奇跡の一本松駅」を発車すると、BRTはいよいよ県境に向けて山を越えていく。

遠くに奇跡の一本松が見えた。また絶対来よう。

山越えになってもなお、風光明媚なリアス海岸が左手に広がる。

さて、乗ったBRTは陸前高田から客はずっと自分ひとりで、途中の停留所でもまったく誰も乗ってくる気配がない。そのうちに県境を越えて宮城県に入り、三陸自動車道を進んでいく。気仙沼市内に入ったところでようやく高校生の客が2,3人ほど乗ってきた。

ずいぶんと不思議な道路だが、これは元々の大船渡線の線路跡を活用してバス専用道路として整備されたもの。この連続するトンネルの形がいかにも鉄道らしい。

鉄道とBRTの結節点、気仙沼駅へ到着。本当は気仙沼で行きたい場所はさっき通り過ぎたひとつ手前の駅が最寄りだったのだが、せっかくなので一駅戻ってその場所へと向かうことにする・・・が、暑い。たまらず見かけたセブンイレブンで冷たいスムージーを買う。

津波が到達した高さを示す看板。よく見れば、隣の家の玄関扉の高さとほぼ一致している。

炎天下の中30分以上歩いて、気仙沼市復興祈念公園にやってきた。

とにかく、この街を高台から見たかった。向こうに見えるのは鹿折地区。とくに右側、明らかに道路も建物も新しく整備されているのが見て取れる。もちろんこのあたりの津波被害も甚大なものだった。

その左側の安波山は、2011年3月11日のあの日たまたま気仙沼でロケを行っている途中に震災に遭遇したサンドウィッチマンが逃げた高台として知られている。サンドの2人はこれをきっかけに「東北魂義援金」を設立し、熱心に復興活動に携わっているのはたいへん有名な話だ。

誰もいない復興祈念公園。たしかに酷暑だが風は気持ちいい。気仙沼の街を眼下に見下ろしながら、しばし物思いにふけった。

しかし高台なのでこの急坂はなかなか大変だった。というか、東北に来てから登山ばっかりしている気がする。
 

南町→県庁・市役所前

気仙沼まで戻ると、陸前高田発よりも1時間早い気仙沼市内を出発点とする高速バスがある。どちらに乗っても仙台では1時間以上空き時間ができるのだが、後発のバスがうっかり渋滞して1時間遅れとかになれば非常にまずいことになるので、先に出るバスで名残惜しいが三陸地方を離れることにした。

前述のように気仙沼の市街地にこまめに停車するタイプなのだが、復興祈念公園から一番近い乗り場は南町というバス停だった。朝乗った釜石行きが停まった「気仙沼市まちひとしごと交流プラザ前」というバス停から歩いて30秒くらいのところ。せっかくなので交流プラザも見学する。

近くにまたセブンイレブンがあったのでアイスコーヒーをテイクアウトし、交流プラザのデッキで湾を眺めながら休息。

定刻よりやや遅れてバスがやってきた。ちなみにこのバスも予約不要なので満席だったら乗れないのだが、1/3ほどの乗客を乗せてやってきた。このバスはこの後気仙沼を抜けて南三陸町でもいくつか停まるので、まだ乗客は増えそうだ。

リアス海岸を思う存分眺められるように進行方向左側の席を取る。が、結局そこそこな区間寝ていた。

気仙沼市内から仙台市内まで2時間半と結構な長丁場。途中、矢本PAで休憩をとるが、ここはトイレと自販機のみの簡素な施設なのでさっさと車内に戻る。

仙台東ICで高速を降りるころにはるか向こうに見える荒浜地区も、仙台市内でとくに津波被害が甚大だった地域である。

さてこのバスはもちろん仙台駅前でも停まるのだが、なんだかんだほぼ定時で仙台市内に入ったので帰りの深夜バスまで2時間ほどできた。まだ仙台市内をうろつける、ということで、ここは仙台駅を乗り越して、バスの本当の終点である県庁・市役所前という停留所で降りる。

しかし仙台という街はどの大通りを歩いてもこれでもかというほど街路樹が植えられている。特に素晴らしかったのがこの勾当台公園から定禅寺通にかけてのエリア。さっきの「県庁・市役所前」バス停はまさにここにあるのだが、こんな官公庁街が緑につつまれている風景に記憶がない。

勾当台公園も実に美しい。

杜の都」とはよく言ったもんだなあ、と感心しながら、仙台駅まで散策する。

途中にはポケモンラプラスが描かれた電気バスにも出会った。

仙台駅の横にあるアエルという施設の最上階に無料展望台があるということでついでに立ち寄る。

日も暮れてきた。ということは東北を離れる時間がいよいよ迫っていることを意味している。

仙台駅の土産物屋で両手に抱えきれないほどの大量の土産を購入し、時刻は19時を過ぎた。あと30分で帰りのバスが発車する。

さようなら、仙台。夏の東北はどんだけ暑くとも最高だった。
 

仙台駅前→那須高原SA→京都駅八条口

帰りも京都・大阪行き深夜バス「フォレスト号」のお世話になる。行きは近鉄バスだったが帰りは宮城交通のバスが来た。今日3本目の宮城交通である。

乗るなり、頭上の荷棚に買った土産類の紙袋がどう考えても収まらないことに気がつく。かといってトランクに載せるのも危険すぎる。たまたま隣席が空いていたので乗務員に交渉し、そこへ置かせてもらうことができた。これ、断られてたら軽く詰んでたな。

19時40分発とかなり早い出発なので、夕飯は弁当をテイクアウト。ただ昨日牛タンを堪能済だったので、鮭はらこ飯を買った。おいしかったけど、ちょっと量が少なかったかな・・・。

バスは2時間であっという間に東北を抜け出し、栃木県は那須高原SAで休憩。行きも鈴鹿SAで休憩後仙台まで直行だったが帰りも同様で、那須高原をすぎると次に降りられるのは京都駅八条口、つまり自分が降りるバス停になる。

で、栃木といえばやはりレモン牛乳。案の定売っていた上に、なんなら「メロン牛乳」という見慣れない亜種まで売っていたので両方ともお買い上げ。メロン牛乳は普通に美味かった。

さて帰りのバスはそこまで乗客がいないものの、なぜか前後ろに乗客がいる席をあてがわれてしまい、行きよりはかなり窮屈。しかも寝ている途中、左耳にかけていたワイヤレスイヤホンを後ろの客の足元に落っことしてしまうという大ハプニングも発生。こっそりピックアップする羽目にもなった。

さらにふと目が覚めた4時半ごろの愛知県・岡崎付近ではなぜか渋滞に巻き込まれており、これ絶対遅れるだろと思ったりもした。しかしなんとバスはほぼ定刻に京都市内へ。目覚めて時計を確認して6時、バスの外の景色を見たら京都の東山郵便局前を走っていて大変驚いた。

京都駅前にいる宮城交通のバス、というのもなかなかの違和感がある。

あとは、大荷物を抱えて最寄り駅行きの電車に乗り帰るだけ。本当に18時間前に岩手県にいたのだろうかと不思議になりながらも、バス3本900km超えの移動は無事完結。まあ確かに数日腰の違和感には悩まされたが、その代償を払ってもこの旅行ができてよかったな、と心の底から思う。

また行こう。

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